懇願








「・・・・・なまえは、俺達と家族でいることは、嫌・・・なのかい?」







『・・・それは・・・・・精くんと沙耶の方なんじゃないの?
・・・・・・私もそろそろ限界かなって思ってたし・・・・。』







「・・・・・限界って?・・・・・」






『・・・・・別に、精くんと沙耶がきっかけじゃないって話・・・。
私、心のどこかで、本当のママとパパに悪いって感じてたんだと思う・・・。

だから、父さんと母さんは私のこと本当の娘って言ってくれてるけど、精くんと沙耶にそれを押し付けるのは違うなって思ってた。
父さんと母さんは私にとっては、父さんと母さんで大事な人だけど、パパとママの代わりではないし。
代わりだと思うのは、パパとママにも、父さんと母さんにも失礼だと思う・・・。

さっきも言ったけど、家族って言葉に縛られる必要はないって思ったんだ。

だって、パパとママはこの世に居ないけど、私の家族だし、父さんと母さんとは血はつながっていないけど私にとっては家族なんだと思う。
それに、結婚したらその人と築くものも家族だし、家族って色んな形があると思うの・・・。

・・・・・だから、私が幸村でなくなって、精くんも沙耶も幸せになるのであれば、それが幸村家の家族にとって一番の幸せだと思ったの・・』







「・・・・・そんなの幸せじゃないっ!!

・・・・・・ごめん、大きな声だして・・・。


・・・・確かに沙耶も俺も、新しい家族の形に戸惑っていたけど、でもなまえが出て行くって形で俺達は幸せにはなれないよ。・・・・少なくともこの4年は、幸せではなかったよ・・・。

俺も沙耶も、器用に見えて不器用だから・・・。それに沙耶は、出来のいいお姉ちゃんに焼きもちを焼いていたんだと思うよ。

・・・・・俺は、・・・・・・・」







『・・・・・・・・・』








「・・・・・俺は、・・・・・・・なまえのことが・・・・・・・・・」









『・・・・・・・・・・・・』











「・・・・・・・・っ・・・・・・・」










『・・・・・うん。ありがとう・・・でもやっぱり、どこかで幸村って名字に違和感はあったんだ・・・。

そんな私の気持も、沙耶と精くんは感じてたんだと思う・・・。二人とも鋭いから・・・。

・・・それでも、身寄りの無い私を引き取ってくれた幸村家には、いまでも本当に感謝してる・・・。



・・・だから、縁を切るとかそんなことじゃなくて、・・・・・・。

うまく言えないけど・・・つまり、精くんと沙耶が結婚するときは式に行きたいし、私が結婚するときは、精くんと沙耶にも来て欲しいなって・・・・・そういうことかな。』








「・・・・・・・・・っ・・・・いやだ・・・・・」










『・・・・・・・・・・。




・・・・そっか・・・・・・・そうだよね。・・・・・・ごめん・・・図々しかったね・・・。



・・・・・・・・・ごめん、やっぱり今日はこれで帰ろうかな・・・。母さんには、後で謝っとくね・・・』












言い終わるや否や、バッグを持って立ち上がる。

リビングの入り口に佇む兄の横を通ろうとすると、グッと兄に腕を捕まえられた。

グット引き寄せられたかと思えば、そのまま引きずられソファーに押し倒される。





ドサッとソファーに投げられて押し倒された状況に驚きを隠せない私を、上から眺める兄の表情はどこか悲しそうで暗く冷たい顔をしていた。










「・・・・・・なまえは、もう誰か好きな人でも居るのかい?・・・」





『・・・・・・は?・・・え?』




「・・・・・結婚・・・・・するの?」




『・・・・・・うん・・・いつかはすると思う・・・でも精くんが嫌なら結婚式よばないから、さっきの話は忘れて。
・・・・・・精くん?』






「・・・・・・・嫌だっていったら?・・・・・・」





『・・・・?・・・・・ごめん、どういうこと?・・・』













「・・・・・・・・結婚しないで・・・・・

・・・・・好きなんだ・・・・なまえのことが・・・・・・・



・・・・・・・他の男と結婚なんか・・・・・しないでよ・・・・」



















 

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