私の幼なじみについて話そうと思う。
私の幼なじみ、幸村精市は・・・
「ねぇねぇ、昨日のテニス部見た?!もう、ちょーカッコよかったよね!?」
「ほんとほんとっ!あんなにテニスも強くて、成績も良くて、優しくて、そんでもってイケメンなんて反則だよね!」
「そうそう!今朝なんかもちょー爽やかだったし、もうそこらの女の子よりも綺麗だしさ!」
「分かる!テニス部はカッコいい人多いけど、幸村君はやっぱりなんかちょっと違うわー」
「だよねー!なんか人間っぽくないっていうかね。もう綺麗すぎて恐れ多いしさ、欠点なんかなさそうだもんね。てか絶対ないっしょ。」
「うんうんっ!ほんと、神の子だわー。」
「ほんとそれ!神の子!」
・・・・・・。
多分これがこの学校に通う女生徒達多数の幸村への印象だろう。
でも私は知ってる。
幸村精市が優しいと呼ばれる人間なんかじゃないってこと。
欠点だって知ってる。あいつが優しいのは優しくしなきゃいけない相手だけだ。
つまりは、外面を良くしなきゃいけない他人にだけ優しく取繕っているのだ。それ以外の、あいつが信用ををおいたり、仲のいい相手には優しいどころか、鬼だ。
我がままだし、自分勝手だし、自惚れやだし、強引だし、頑固で強情で短気だ。
むしろ、あいつの長所よりも短所を上げた方が、幸村精市という人間をより分かりやすく説明できると思う。
「なまえはいいよね!あの幸村君と幼なじみなんてさっ!」
「ほんとそうだよっ!しかも家も近いんでしょ!?」
私と幸村は生まれたときからの幼なじみで家は隣同士だ。2階にある私と幸村の部屋は向かい合わせになっていて小さなバルコニーを飛び越えるだけで玄関を介せずともお互いの部屋を行き来できるようになっている。
小さいころは、二人ともそうしてお互いの部屋を行き来してはバレてどちらかの両親に危ないとよく怒られた。
「・・・そうかな・・・そんなにいいもんでもないよ。」
「えー!ちょー羨ましいよ!!・・・って、でもなまえが幸村君と話してるとこって、あんま見ないよね・・・ってか、見たことないかも・・・」
「確かに・・・ね、ね、どうして?」
「・・・・・・どうしてって・・・私、あいつのこと嫌いだもん。」
「えええ!?そうなの!?」
「・・・大っ嫌い。あんな奴。」
吐き捨てるように言ってから、ペットボトルに残っていた甘いアップルティーを飲み干した。
そう・・・
私は、幼なじみの幸村が、大嫌いだ。