独り言
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家に帰って雨で濡れて冷えた身体をシャワーで暖めてから、髪を乾かし寝る準備を整えベッドに寝転ぶ。
携帯を確認するとメッセージアプリを通してメッセージが二件きていたので開くと、一つは美香からでもう一つは大学のサークルでの先輩からだった。

私の1つ上の白石先輩は、優しくて面倒見が良い素晴らしい先輩だ。
それに加えて見た目まで良いので女子からも非常にモテるのだが、何故かここ最近、頻繁に私に構おうとしてくる。
最初、私は先輩が隠れ蓑を探しているのかと思い、私なりに空気を読んでいたつもりだったのだが、それがきっかけとなって今では白石先輩はこうして一日一回は私に連絡をくれるまでになった。

昔から私の周りには顔の良い人たちが揃っていたので、私はイケメンにはある程度耐性がついている。
だから正直、白石先輩がどれほど格好良くても、私にとっては今更なのだ。



私は気付いたころから精市くんが好きで、精市くん以外は男性として意識などしたこともなかった。
だって私が女性としてみて欲しかったのは精市くんだけだったから。

でも、精市くんを諦めた今では、精市くん以外の異性に目を向けなければいけないということは嫌という程わかっていたつもりだ。
だから、私は先輩から毎日くるメッセージに対して律儀に返信をしていた。
先輩とどうこうなる、そういう考えよりも早く精市くんを私の中から追い出したかった。





先輩からのメッセージの内容は明後日開かれる私の展覧会についてだった。


私は高校を卒業してから、美術系の大学に進んだ。
お察しの通り精市くんの影響だ。
もともと絵を描くこととモノ作りが得意だった私は高校の担任の勧めもあり美大に進むことにしたのだ。
精市くんと関係がなくなった今でも私は芸術を愛してる。
この道に出会えて良かったと心から思っているし、私がこの道に進むきっかけをくれた意味では精市くんには感謝している。



大学に入って2年で展覧会を開けるなんてすごくレアなケースで自分でも運が良いと思う。
いわばデビューとなる大事な展覧会なので少し落ち着かないが、やれることはもうやったのでどうしようもない。






私は、先輩に返信をしてから携帯を閉じ、どこか落ち着かなくなった心を鎮めながら眠りについた。


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