今は夏なのに、密着した彼の温もりが心地好い。生温い昼下がりの雰囲気に任せて両腕を首に回せば、少し驚いたようなブラウンの瞳と視線が絡み合う。何か言いたげなその唇を自分のモノで塞いでしまおうか。そんな事を考えていると、ずいと顔が近付き、逆に奪われてしまった。してやったりと得意気な顔で此方を見る男に、認めたくは無いが敵わないなと思った。優越感に浸る瞳が何だか無性に悔しかったので、啄むだけのキスを角度を変えて返す。すると彼は嬉しそうに目を細めながら僕の髪を梳き、笑う。しまった、逆効果だったか。
彼は名残惜しそうに唇を離した後、僕の額に口付けを落とした。之はこの男の癖のようなもので、僕が真ん中分けだから、らしい。まぁ、それは何となく解る。僕だって彼の蟀谷や首に口付けをするのが好きだし、触れたいと思う。その首筋に何度も唇を押し当てていると、彼が擽ったそうに身を捩らせた。


「ん…オマエさ、俺の首にキスするの好きだな」
「君には負けるよ」


笑いかけると、今度は噛みつくように乱暴なキスをまた唇に。
…食べられたような、気がした。


「ん…ぁ、つい、から」


離して。接吻の合間に空気を吸収するのに合わせながら喘ぎ、彼の背中を叩いて抗議する。このようなキスは鼻で息をするものだと聞いた事があるが、相手に自分の息が掛かるなんて羞恥もいいところだ。大丈夫か、なんて言いながら僕の背中をさする男の頭を、今すぐにでも殴打してやりたい。


「君、平気なの」


呼吸を整えつつ彼に問いかける。案の定何が?とでも言いたそうにしている顔を見て自然と嘆息が漏れた。


「息、出来なくなるだろう」
「あ?鼻ですれば良いだろ」
「………」
「そういやオメー、我慢してるよな。」


ああそりゃあするさ。当たり前だ、と言うと何で?と質問で返されてしまった。


「何で、って」


ぐ、と言葉が詰まる。こんな馬鹿げた理由、言いたくは無い。笑われるのが落ちだ。


「…別に気にしなくて良いのによ」


ぽつりと放たれたその一言に対して非常に腹が立ったのだが、続け様に石田の吐く息なら俺が全部呑み込むのにと言われ、嗚呼この男は元来のロマンチストであったと再確認した。呆然としている僕の甲に唇を押し付け、滑るように薬指を食む。感覚が麻痺しているのか知れないが、何だか変な気分だ。


「な、もっかいしよう、」
「…このキス魔。」


真剣に訊いてくる彼の顔がおかしくて、ふ、と噴き出した瞬間、唇を吸われた。呑み込むって、ああ、本当に、



 
 
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