捏造あり
学校から帰ってきて部屋に鞄を投げ入れスカートからすぐに動きやすいハーパンへ履き替えた。ボタン外すの怠いから上はそのまま。
お母さん達は店に出てるので家はクーラーも何も付いてない。誰もいないのを良いことにクーラーと扇風機をつけ、風の当たる一番いいとこを陣取ってテレビを付けた。あ、お菓子取ってこよう。
残念なことに決して富豪ではないうちんちはテレビもクーラーもリビングにしかない。ジローはたしか部屋にクーラーついてなよなーうらやましーと隣の家の幼馴染みを思い浮かべる。
ポテチとケーキとコーヒー牛乳を抱えてテーブルへ戻り録画してたドラマやらアニメを見ようとリモコンを手に取った。
どーれーにーしーよーうーかーなー。あ、このドラマ主演あの若手俳優さんだよね。一個前の戦隊演ってた時から目つけてたんだ。これにしよ。ピッ。
ドラマを見て少しすると、隣の家が煩くなってきた。右隣は亮ちゃんちだ。ん?おかしいな。公立の帰宅部エースな私と違って亮ちゃんは全国常連校のテニス部レギュラーだ。こんな時間に家にいるのか?それとも啓くんが帰ってきたのかな。おばさんたちは仕事のはずだし…まぁレギュラーと言えどもオフの日くらいあるか。
いつもは薄いカーテンのみだけど、亮ちゃんのお友達が来てるなら話は別だ。カーテンからちらっと見るとビンゴ。制服きた亮ちゃんとそのお友達。全員氷帝か。あ、がっくんとジローもいる。カーテンを全部閉めてコーヒー牛乳を飲む。なにかちょっとしたパーティみたいな感じだったな。菓子パか。お坊ちゃんたちもそんなことすんのかな。そういやがっくんたちが中等部に上がって部活に入ってからというものの中々四人で遊ぶということも減ってた。夏休みも部活まみれなのよあいつら。寂しいだろーが。ま、楽しくしてるみたいだし応援するのみ、だ。
部屋も涼しくなってきたので扇風機を止める。またコーヒー牛乳を飲んだ。
あ、そういやおばあちゃんちから果物いっぱい送られてきてんだよね。がっくん達んちに持ってけって言われてたなーめんど。あ、梨食べたい。でも剥くのだるいなーお母さん帰ってくるまで我慢するか。
コンコンコン。カーテンで締め切った窓を叩かれた。なんだなんだ。
「あ、亮ちゃん。どうしたの」
「わり、グラス一個貸してくんねぇか?足りなくてよ…あ、俺が使うから!」
「いーよー」
立ち上がってキッチンへ向かう。亮ちゃんはというといつもとはいえ勝手に上がってポテチを食べてやがった。こんにゃろ。あ、ついでに果物持って行かせよう。がっくんとジローんちのは…さすがにだめか。あと余ったケーキも持たせてやろう。うちんちはケーキ屋だから冷蔵庫にはいっつも余ったケーキワンホールがある。今日のは切り売りの余ったやつだけどまあよし。箱を取り出してグラスと共に、果物の入ったビニールも忘れずに持っていった。リビングに戻るといつのまにかがっくんが増えていた。
「亮ちゃん、がっくん」
「よっ」
「わりーな…って荷物多くねぇか?」
「これね、おばあちゃんちからの果物。あとよかったらケーキ食べてよ。がっくんちには後で届けんね」
「おっけー」
「おっ久々だなおじさんのケーキ!ありがとな」
「いーよー」
亮ちゃんは全部受け取るとケーキを溶かさないためにすぐに家に戻ったよう。一応庭の栄目にフェンスはあるけどさすが運動部とも言うべきか、飛び越えていった。おいおいケーキ崩れるぞ。
「梨?」
「うん」
「おっやったぜ。なぁ剥いてくれよ。食べたい」
「いや自分で剥きなよ。面倒だよ」
「はー?お前それでも女子かよ」
「馬鹿だながっくん。今時包丁も使えないと男子はモテないよ」
「くそくそ!そんなスキルなくてもモテるっつーの!」
「えー?がっくんがー?ははは白々しい嘘よの」
「テニス部はモテんの!ファンクラブある奴だっていんだからな!」
「中学でファンクラブって…あ、わかった、私立ジョークだね?」
「ちげーっつの!くそくそ信じろよ!」
はははと笑い飛ばす。てかそろそろむわむわするから窓閉めたいんだけどな。
「がっくんもどんなくていいの」
「あーまだ具煮えるの時間あるし」
「は?もしかして鍋?こんな真夏に?ばか?」
「るっせー!美味いからいいんだよ」
いいなぁ鍋。暑いのは嫌だけど。冬のアイスと似たようなもんかな。
「あ、ほら、あいつ。生徒会長兼テニス部部長。ファンクラブちょーすげーの」
「はー?…あーたしかにイケメンだけど……ファンクラブって……ありえなーい」
「ありえんだっつの」
金持ち校はよくわからないジョークをお持ちで。
亮ちゃんちに目を向けるとたまたまジローと目が合う。寝ぼけ眼がカッと見開いた。
「おはよー!」
大きく手を振ってくる。手というか腕。一気に氷帝テニス部さんたちの目がこっちを向いた。ひええ。
「因みにジローの向かいにいる丸メガネいんだろ。あいつもファンクラブある」
「はーいー?さすがにないっしょ…なんか…怪しいし……」
「っぎゃははは!!あや、あやし!たしかに!ブッフフフ…!」
「笑いすぎ」
「ぐっふふふ…ふふ…ひぃー!ユーシにいってやろ!」
「なっちょっばか!果物あげないよ!?」
「はー?ジョーダンだろ!通じないやつだな!」
「ケンカ売ってんの!?」
「買ってやるよ!」
「岳斗ーつみれ食べちゃうよー」
「つみれ食べちゃうってさ!早く行け!」
「あっおいジロー!やめろ!」
バタバタとがっくんは庭に出て行った。すぐに窓を閉める。はーちょっと汗滲んじゃったよ。てかドラマもう終わりかけだし。巻き戻さないと。
久々に騒いだなぁ。