「長谷ちゃーん」

「長谷部とお呼びください」

我が近侍、長谷部は主に忠実だ。実にいいことだとは思う。他の審神者の元にいるへし切り長谷部は、テンプレのしっかり者の他に、わんこ化したりこじらせヤンデレ化してしまったり、はたまたマゾ長谷部化もあったようだ。環境及び審神者の対応の仕方や忠誠度によって変わるらしい。審神者掲示板で見た。

してウチの長谷ちゃんこと長谷部はどうかというと。
私の本丸にはまだ刀剣男子が少なく、その中でも長谷ちゃんは群を抜いてしっかり者なので近侍として支えてもらってる。
だが最近…いや元からだったのかもしれないけど、ふと長谷ちゃんを見遣るととてつもなく冷めた目をしてたりする。それに長谷ちゃんの口癖「主命とあらば」に違わず、本当に何か命令しないとやってくれない。それどころか用が無くなると私の周りから去る。
おかしいな、わんこ系長谷部は常に近くにいて鬱陶しいと聞いたんだけど。
ここまでくると私が避けられてるんじゃないかと思うが、そんなことを気にする私じゃない。嘘、少しは気にしてます。ちょっぴり傷付いてます。

「何か御用ではないんですか?」

あ、今迷惑そうな顔した!隠せよ!ちょっとは隠す努力をしろよ!

「お、お茶を。お茶をしようよ。長谷ちゃんも疲れたでしょ。休憩ね休憩」

「主命とあらば」

「主命じゃないって言ったら?」

「遠慮させていただきます」

「主命でお願いします」

そして長谷ちゃんが一旦部屋を出て行く。
ちなみにこの長谷ちゃんという呼び方だが、審神者掲示板でウチの長谷部のことを相談したら「渾名をつけて親睦を深めよう」という結論に至ったからである。全く深まってない。寧ろちょっと嫌がられてる。

「主、お茶を」

「お、ありがと」

いつの間にか帰ってきてた長谷ちゃんが、縁側に座ってた私の隣に盆を置いた。隣をポンポンと叩くとそれに従って長谷ちゃんも座る。「長谷ちゃんさぁ」と口を開くと、長谷ちゃんは目線だけ私に向けてきた。

「私のこと嫌い?」

「………いえ、そのようなことは」

「即答しろや」

なんで長谷ちゃんはこっちを見ないんだろうか。

「長谷ちゃん、私はね、長谷ちゃんが何を考えてるか分からない。どんな思いで私を主と呼んで、私に従ってるのか、主命に従ってるのか、分からないし、長谷ちゃんが主と呼ぶ私の向こう側に誰を写してるのかも分からない知らない。だから教えてよ。せっかく顕現して話せるようになったんだよ。話してよ。もっと頼りなよ」

「…、…それは…」

漸く長谷ちゃんが私を見た。
口を緩く真一文字に結んだまま、私を見つめ、そして口を開く。


「主命でしょうか?」


あ、わたしこの子と仲良くできねーわ。

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