ず、と鋭い剣のように変形させた自身の腕を引き抜くと、既に息絶えてるソレは支えをなくして地面に崩れ落ちた。

「やめてよね、今フブキちゃんはプライベートなんだから」

先程まで隣の市で怪人と戦闘、無事人々を救ったフブキちゃんはプライベートモードだ。怪人がまた目の前に躍り出たら邪魔だろう。消しとかないと。公私混同はなるべく避けたい、と俺は思うから。あの目障りなお付き共もいない。しかし彼女がこれから向かう先はZ市の避難区域、ヒーロー・ハゲマントの住居。男の住居に女一人で行くなんて何考えてんだかって感じ。俺なら即行喰……いや、フブキちゃんの嫌がることはしない。だって俺紳士だし。──ということで、誠に遺憾ながら、フブキちゃんの足止めになるようなことはしない、させないのだ。だってハゲマント、及びその住居に集まっているその他ヒーロー共はフブキちゃんの初めてとも言えるオトモダチである。好きな女の幸せ握り潰すのは男のすることじゃない。

………とは言っても、俺はフブキちゃんと話すどころか、面と向かったことも、目が合ったことすらないのだ。ただの、フブキちゃんに一目惚れした、ストーカーだ。
もう1つ付け足すなら、俺は怪人だ。

ある日、俺の管理下の下っ端カスが「我慢できねえ、暴れたんねえ!」とほざき散らして地上に出て行ってしまったせいでそいつの後始末のために俺も地上に顔を出したのが出会いだった。ちょうど、フブキちゃんがカスをボコボコにしているところで。俺は見事にその容姿、声、技の華麗な捌き、そして救ってやった人間共に対する 高圧的ながらも優しさのある、そう、ツンデレ具合。半端なかった。スキ。そうしてそれから一途な俺のフブキちゃん観察の幕上がりという訳である。

今はオヤツドキ。この時間帯なら夕方頃には帰る割合が高い。そういった、ちゃんと男女の境界線を越えないように考えてるとこも好きだ。男はオオカミ。俺みたいなね。








↓フブキが超強い怪人に殺されそうになる、主人公助けるけど咄嗟すぎてお腹に穴あく、「アナタ…怪人?なにを、どう、して、」


「俺はさ、人も殺す、無情な怪人だけど」

血が止まらない。痛みも寧ろ感じない。フブキちゃんを初めて目の前にしてハイになってんのかな。血が逆流してきて、口から吐き出た。

「君だけには、優しくなれる、気がしたんだ」

最初で最後がこれかよ。格好悪いな。いや、でも、好きな女守れて死ぬなんて、最高に男らしいじゃん、俺。

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