毒の花 | ナノ

「先生!!」

玄関先から聞こえるその声に、サイタマさんは「やっぱりな…」と呟き重い腰を上げた。

玄関の様子を見るべくリビングから顔だけ覗かせる。
あの金髪少年、先日の大量な蚊の時にいた少年である。サイボーグらしいけど…ルックス良し、声も良し、顔も良しの所謂イケメンで是非仲良くしてもらいたい人だ。要約すればかっこいいからお近付きになりたい。
密かに物質界の少女漫画という物を愛読していた私には恋というものに憧れていた。ちなみに少女漫画の所有者はメフィスト様だ。びっくりだろ。

じーっと見ていると、どうやら家に上げるようで。こっちへ二人が歩いてきた。

「まぁ適当に座れよ」

「ありがとうございます」

「座らせていただいてます」

「ハナコお前はお茶くらい淹れろニート」

「キィイイイそれだけはサイタマさんには言われたくないです!淹れますけど!」

寝っころがってる無防備な姿は流石に恥ずかしいので座り直してみたらサイタマさんに怒られてしまった。なので渋々腰を上げる。

はっ…いやよく考えて私。これは所謂女子力向上のチャンス?アピールポイント?サイタマさんはそれを与えてくれたというの?

姿勢を意識してちょっと内股気味に歩く。そして笑顔を忘れずに。

「今淹れますね」

ニコッと微笑んで言ってから茶葉を探すべくキッチンへ凛とした足取りで向かった。私今とっても可憐でございますのようふふ!女子力アップアップでイケメンに持て囃される未来が思い浮かんだ。少女漫画の主人公は愛されるのが鉄則だろう。モテるって…いいね…
よく考えれば悪魔祓いの見習いの子供達もイケメンだったような気がする…この世界で女子力上げて上げて上げて、ゆくゆくは悪魔の天敵、祓魔師をもメロメロにさせるとか…!?禁断の愛とかー!?いい!私いいよ!緑男にこんな力があったのね!

サイタマさん曰く「この先絶対実現しない未来」の妄想をしていた私はこの時知らなかった。あのサイボーグくんが私を「変な歩き方をする花の怪人」と言っていたらしいということに。



***



「飲んだら帰れよ。弟子なんか募集してねーし」

お茶をテーブルに置いた時、ふとサイタマさんがサイボーグくんに言う。
意外ときっぱり言うよね、サイタマさんは。頼まれたら断れなさそうな顔してるのに。

けど弟子とかそういう話はサイタマさんの意見次第なので私は関係ない。大体、趣味に生きるらしいこの人に弟子入りとかこのサイボーグくんも中々の強者だと思う。ということで今日の洗い物をすることにしよう。
スタスタとキッチンに向かって面倒だと放置していた皿洗いを再開する。

あー後で洗濯もしなきゃな。そういや洗剤がそろそろなかった。サイタマさんが散歩行く時に買ってもらおう。けどサイタマさん、散歩行く時って突発的というかなんというか…テレビ見てたと思ったらいきなり立ち上がってあのヘンテコスーツ来てすぐに行っちゃうんだもんな。頼む暇がない。あとあれ絶対散歩なんかじゃない。何か散歩じゃない別の用事だよ。じゃないとあんなスーツ来ていかないと思うし、ハゲてないと思う。ハゲは関係ないけど。ちなみに、私はハローワーク行ってるんだと思う。

色々と考えていると、サイタマさんの「ハゲてんだようるせーな!!何なんだテメーは!!」という怒声が聞こえて顔を上げた。

やっぱハゲ云々にはすごいキレるなぁなんて思いながら水道の水を止める。洗い物はもうない。
話の流れによるとサイボーグくんの過去の話が聞けるようで、私は洗濯を後回しに二人の近くに座った。

「4年前…」

その出だしから始まったサイボーグくんの過去話は存外長くて、変なところで気の短いサイタマさんは「バカヤロウ20文字以内で簡潔にまとめて出直してこい!」とブチキレた。

「サイタマさん落ち着いて!?」

「これが落ち着いていられるか!腹立って耳が拒絶するわ!」

意味が分からないです!なんてやり取りをする横目で、サイボーグくんは20文字以内で簡潔に話すべくどうまとめるべきか顎に手をついて悩んでいた。


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