毒の花 | ナノ

いい天気だ。
家事はサイタマさんの気分で変わるものの、私が半分担っているので今日は洗濯物を干している。
バサバサと羽音が聞こえて柵を見るとカラスに体が生えたような生き物がいた。ガシッと捕まえる。

「サイタマさんこいつ飼っていいですか!」

「だめ」

「うわあああんひどい」

即答されてしまった。
洗濯物が途中だけども放置してサイタマさんに詰め寄る。サイタマさんの弟子になりたいらしい物好きなジェノスくんはきっちりと正座をしてその様子を見ていた。
かわいいじゃないですかこのカラス!

「見てください。愛らしさが漂っています」

「漂っていません。戻してこい」

「ちゃんと見てくださいよ!」

こちらを一掃してずーっと漫画に釘付けなので実に遺憾の意です!と暴れると手からスポッと奴が逃げた。しかし窓は閉めているので外には逃げられない。ぎゃあぎゃあと可愛い鳴き声で部屋を暴れ回るそいつはサイタマさんの癪に触ったようで、サイタマさんは「鬱陶しいんだよお前もカラスも!」と怒鳴って本をカラス目掛けて投げつけた。外れた。てかわ、私も!?私関係ないです!

「おい、花の怪人。先生に迷惑を掛けるのはやめろ」

「だから悪魔です!怪人じゃないです!」

「変わらないだろう」

「変わりますー聖水とか詠唱唱えられたら死にかけますー」

いい加減にしろと言わんばかりに文句をつけてくるジェノスくん。初めて会った時からこんな態度なもんだから「イケメンにモテよう!作戦」を続けるのは断念された。いやイケメンなのだけど。一々突っかかってきやがるんです。少女漫画なら、好きだからこそ素直になれない男の子というパターンだけどジェノスくんは違う。本当に鬱陶しく思ってるやつだ。

「大体そういうジェノスさんだって毎日押し掛けてサイタマさんの迷惑になってると思います」

「お前よりマシだ自称悪魔」

「きいいい!私はハナコです!」

「いやだから二人ともうるせーよ。ハナコはあの鳥どうにかしろ」

カラスを退治しようと家を飛び回るカラスを追いかけてたサイタマさんが戻ってきた。捕まえられなかったんですね。
するとキッチンの方からバサバサーっとカラスがやってきた。

「先生、それは命令ですか?」

「あ?おおもうそれでいいから。あいつマジ鬱陶しい。ハナコもなんとかしろよ」

「ええーめんどくさ」

「先生の命令だぞ。背くのか怪人」

「だから怪人じゃありませんって!ちくしょう!」

半ばヤケクソでやることになったが、カラスは一直線に私に向かってきた。な、なに!?私に懐いてるの!?かわいい!飼う!
するとカラスはあろうことか私の頭の花をつつきだした。こんな奴飼わない!

「やめてー!いだいいだだいででで!たすけて!」

「馬鹿め」

「む、むきいいい馬鹿って言わないでください馬鹿!私が捕まえるんです!」

鼻で笑われてムキになり、後頭部を迂回してるカラスを捕まえようとバタンバタンと暴れる。しかしカラス捕獲命令は私とジェノスさんの競争みたくなっているので、ジェノスさんもカラスを捕まえようと手を出した。

「いででで!今引っ張ったな!焼き鳥にしてやる!」

「飼うんじゃなかったのか」

「うるせーです!もう勘当ですこんな奴!いたっ」

「一々動くな、お前が動くとカラスも動くんだぞ!」

「は!?なんですか!?そんなのもジェノスさんは捕まえられないんですか!私はできますけどね!これでサイタマさんのプリンは私のもの!」

「いやそんな話一言もしてねーよ」

「だそうだ。先生のプリンは俺が守る」

「ぎゃああいったあああい!」

ごたごたと暴れ回る私につられてカラスやジェノスさんも暴れることになる。だけど近隣住人がいない上に視覚的には邪魔がいないからかサイタマさんは特に何も言わなかった。

「だから、いい加減に動くな。お前の花が狙われてるんだぞ」

「知ってます!私にどうしろっていうんですか!」

「だから、動くなと言っているだろう!」

そういうとジェノスさんは私の肩を掴み窓にドンと押し付ける。私を、というより後頭部を窓にぐっと押し付ける感じだけど。そして花を狙って飛んできたカラスを私の顔の横でこれまた窓に押し付けるように捕まえた。

「どうだ。俺の勝ちだ」

「は、はい…そ、すね」

そう言ってドヤ顔しているがジェノスさん!よく考えて!今の状態は謂壁ドンではないだろうか!萌える!
改めて意識すると心臓がバクバクしてきた。

「先生、捕まえました!」

「そっか。とりあえず目の前でラブコメ始めるのやめてくれる?」

ジェノスさんは心外だとでも言うかのように顔を顰めていた。コンニャロー!ときめき返せ!
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