毒の花 | ナノ
「こんにちは、どんなお花をお探しでしょうか?」
ハーイ!こんにちは!ハナコです!
初めてのアルバイトという自立への一歩を着々と歩み出してるハナコです!
お客さんのご要望に合ったお花を探し、オススメし、これまたご要望にあった包装をするのが私のお仕事らしく、既に何人もこなしている。私すごい天才。
またお店から笑顔で花を抱えたお客さんを送り出し、店先からその背中にお辞儀する。私、自立してます。
働くって楽しい!お客さんも温厚な感じの人ばかりで!働くって!楽しい!
店に戻るといつの間にか入店してた男の顔がコワモテすぎてチビった。働くっていいことばかりじゃない。
「い、いらっしゃいませぇ、彼女さんにぷプレゼントですか?」
「いや、そういうのはいない。…あんたに会いにきたんだ」
「へ、…えええ!こ、告白ですか!?モテキ!」
「断る」
「フラれた!告白してないのにフラれた!」
「そうじゃない。…お前本当に怪人か?どうして人間に紛れて生きてる」
「え?…ええ?」
またこれか…
思わず聞き返したけど、すぐにあからさまに溜め息を吐く。
「違いますよ…買いに来たんじゃないんですよね?他に何かあるんですか?」
「怪人の目撃情報があったんだ。その特徴にあんたが酷似してる。何する気だ?菌でもばら撒いてんのか?」
「は、はあああ!?流石に失礼じゃないですか!菌て!菌て!んなことしませんわ!」
「大体そんな花とか、…苔かそれ?パッと見は人間だが色々と変だろ」
「きいいいフェイスペイントとか思わないんですか!」
「フェイスペイントなのか」
「違います」
「違ぇのかよ」
ゴツッと良い音を出して頭を殴られた。
「公務執行妨害罪です!逮捕ー!誰かこの人逮捕してくださーい!」
「寧ろこっちとしても公務執行妨害なんだがな」
「意味分からないです!…も、もしかして貴方もヒーロー活動とか言って私をつけ狙う気ですか」
「そのつもりなんだが、」と言ったところでまたお客さんが来店なされた。すぐに男との会話をやめ「いらっしゃいませー」と接客する。最中に周りを見たけど既に男はいなくなっていた。誰だったんだろうか。まぁ、ヒーロー活動ってのに反応してたから恐らくヒーローだ。やだなぁ怪人倒すって、殺すってことでしょう。私怪人って思われてるってことは、私殺されかけてるってことでしょう。しかも目撃情報って。私狙われてる命狙われてる。
「ハナコちゃーん。お疲れ様、休憩入っていいわよ」
「あ、はい!」
色々考えながら接客をし、お客さんの背中を見送った後にミヤギさんから休憩と告知されて舞い上がった私は先のコートの男のことなぞ既に忘れていた。