毒の花 | ナノ
袋をぶらさげて家へ帰ると、サイタマさんは既に帰って来ていた後だった。
「ただいまです」
「ああ…おかえり…」
「どうしたんですか?」
「今日特売日だったの勘違いしてたんだよ!明日だと!ちくしょう…卵…」
「ふっふっふっ、サイタマさんや。感謝してくださいよ。ほらこれ」
「あ?…む、ムナゲヤ!?お前行ってたのか…!最高だな!」
よくやった!と勢いで抱きしめられ、頭をぽんぽんと撫でられてしまった。なななんだこれ!この状況!少女漫画でよくあるやつだ!サイタマさん恥ずかしいですやめてください!と言うとすぐにやめてくれた。何だよもっと名残惜しめよ。
「そういえばジェノスくんはどうしたんですか?」
「ああ、家壊した奴んとこ行ったら色々あってあいつ負傷したからクセー博士んとこ直しに行った。つーかお前も瓦礫の下敷きになってたけど大丈夫?」
「クセーノ博士だと思いますし気付いてたなら助けろハゲ」
「誰がハゲだ」
サイタマさんの輝く頭に青筋がたったのですぐキッチンへ逃げた。冷蔵庫に戦利品をしまいながら、そういえば家が直ってる事を思い出す。
「サイタマさんサイタマさん、家が綺麗に直ってるんですけど…」
「直させた。壊した奴らに」
「へ、へぇ…そうですか…あ!そういやサイタマさん!」
「なに?」
いつの間にか直ってる(というか新品の)テレビを見ながら返事を返すサイタマさんとテレビの間に入って遮る。私は報告があるんだ真面目に聞いてくれないと。
「私、バイト先決まったんです!ひゅーひゅー!」
「ああそう。よかったな。いいからどけよいいとこなんだから」
「…え、いやちょっと…おいこら」
邪魔だと手をしっしってやられた。わしゃ犬か。やかましいわ。
大体戦利品は褒めるくせに私のバイト就任には褒めもしないって一体全体どういうことだ!と夕食になる魚に思い切り包丁を振り下ろしてダン!と頭を切ったら「うるせぇ!」と怒られた。やってらんねぇです。