毒の花 | ナノ
瓦礫の下敷きになってから10分20分ほど経った頃だったか、とても虚しくなってきたので蔦で瓦礫を退かして脱出する。
元々ここZ市は閑散としているので、辺りは静かだ。虚しい。

ただ何より私は怒りを感じていた。私を放置して行ってしまったあの2人に、だ。この際家を壊した奴なんて気にならない。

とりあえずぽっかり空いて破損している部分を適当に蔦やらで補ってはおく、が。とても怒っている。私は。怒っているというより拗ねている方が正しいかもしれない。…そう、拗ねているんだ!私は!!

「拗ねている!拗ねているんですよ!」

何も返事はない。当たり前か…どちきしょう!
八つ当たりに近くにあったテレビを蹴ったらスクリーンに大きく蜘蛛の巣のようなヒビが入ってしまった。急いで家から逃げた。



***



「んー逃げたはいいもののどうしよう」

とりあえず適当に走って無人街ではない方の、人が栄えてる所に来てはみた。
心なしか人々が奇異の目で私を見ている気がする。気の所為か?それとも私がかわいいからか?んふふ。

「か、怪物!退治してやろう!」

「え?かわいいって?そんな大袈裟な…」

「退治だ!た!い!じ!大体お前あんまかわいくないぞ!」

「か、かわいくないですって!?」

突然背後から声を掛けて来た…なんだろう、所謂コスプレというやつか。サイタマさんに似て…ああサイタマさん!思い出したら腹が立ってきた!

「もう!ほんとさっきから腹立つんだから!」

とじたんだを踏むと、「怪人が暴れ出した〜!」とか「逃げろ〜!!」とか叫んで私達から離れて人々が距離を取り始めた。まてまて!まて!私怪人じゃない!

「ふん…そっちから仕掛けないというのなら、このC級140位の赤マフから行くぞ」

「え?行くってどう…どわっ!やめてください!危害を加えないでください!」

「小賢しい…!」

突如殴り掛かってきた赤マフさん?の攻撃を必死に避けて落ち着くよう促すが赤マフさんは聞かないし、外野が「やれ!」「赤マフがんばってー!」とか叫んでる。これ私が悪者なの!?
それでもか弱い乙女の私を攻撃してくる手を休めないので必死に避ける逃げる。周りは見物客の如く外野が増えてきて囲まれているような状況だ。距離おかれてるけど。

「ふっ、中々やるな…おい怪人!名前はなんだ!」

「え!?名前ですか!?ハナコです!デートのお誘いですか!?」

「人をおちょくっているのか!俺にも選ぶ権利はある!」

「きぃいいい!!乙女の敵!」

さっきから赤マフさんは攻撃の手を休めないし避けるしかないけどこれあれだ、外野を飛び越えれば逃げられるんじゃないだろうか。

赤マフさんと対峙するのを止めて外野の方向へと思い切り走る。

「きゃあああ!こっちへ来たわ!!」

「逃げろ!殺される!」

「うう…!こ、殺されたくないなら道を開けてくださいー!」

そう叫びをあげると、びっくりするくらい綺麗にずららら〜っと2、3人くらい通れる道が出来上がった。なんて連携プレー!すげぇや!そんなに私が怖いんだね!

「ありがとうございますー!」

「くそ!怪人ハナコめ!逃がさない!」

「逃がして!」

外野から抜けたものの、しつこい赤マフさんはまだ追いかけて来ていた。ストーカーだ!この人ストーカーだ!こんな人にお茶誘われても絶体行かないもんね!

「っはぁ…くそ…にがすか…!」

「すいませんね!逃げます!あと私怪人じゃないです!」

人間と悪魔じゃ体力が違うんだぞばーか!
なんて得意げに赤マフさんを撒いた所で減速しちょうど差し掛かった曲がり角を曲がった。

「おい!怪人はどこだ?ここらのはずだが…」

「ああ、この周辺だ。探すぞ。まだ今週ヒーロー活動できてねぇからどうにかやらねぇとな」

「なんだっけ、たしか怪人ハナコ…だっけな?」



わ、私だああああああああああああ!!!




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