「ところで静貴」
「んぁー?」
「その顔の傷は何だ」
「あー…………何でしょう」
「誤魔化すな」
「うー…ちょっと…絡まれた」
「いつ」
「…出て行く前の晩」
「……誰に」
「知らね。酔っ払い…あ」
「何だ」
「すげー、世の中狭ぇな、あいつあいつ」
「あのひょろ長いのか?」
「そうそう、すげー背ぇ高ぇなってムカついたから覚えてた」
「そうか。ちょっと待ってろ」
「え、どこ行くのさ」
「少し話しに行くだけだ。そこで待ってろ、一歩も動くなよ」
「あいあいさぁー」
「おいお前」
「ぉわっ、何」
静貴は何も知らないままがいいさ。
唯一、俺に愛されてる事だけを理解していれば、それで。