「いってきまーす」
「さっさと行け」
「へぃへぃ」

静貴が玄関を閉じた音で、一葉はテレビニュースのアナウンサーの声だけしかない部屋に一人残された。
一葉は今日、授業が午後しかない為午前中は休みだ。
いくら昔から同じ学校に通っていても、大学ではさすがに学部が違う。取る授業が違う。

なんだかんだで静貴があの家を出てからもうすでに一週間が経過している。
その間、静貴はおろか自分の携帯にも荒輝からの着信はなかった。
居なくなった事にはさすがに気がついているであろう、けれど、ない。

荒輝は本当に静貴をもう愛していなかったのだろうか。

だがきっと、お互いの気持ちがどうであれこのまま二人は自然消滅するのだろう。荒輝が動かない限りその未来は確定されている。

「…それじゃあんまりだろ」

静貴、が。

一葉はテーブルに置かれた車のキーを取り、ジャケットのポケットへ入れた。後は財布と、携帯と。

お節介?自己満足?

そんな事は自分が一番よく知っている。
けれど、静貴が動かない以上、この怒りは当の本人にぶつけるしかないだろう?

自分の大切な幼なじみをあそこまで追いつめたのだ。

「ぶっ殺しに行きますか」


目指すはあいつの大学。
青いゴミ袋は未だトランクの中。