「もっかい…ゆうてくだ、さい」



ずっと欲しくて欲しくて堪らなかったその言葉。
俺から言い続ければいつかは返してもらえるんじゃないか、そんな気持ちで言い続けた言葉。
それがやっと聞けた。聞き間違いなんかじゃない。



「残念だな、お前みたいに安売りしてねんだよ」
「じゃあ次いつゆうてくれますか?」
「そうだな…お前が、」



抱き着いた俺を受け止めて、そのままギュッときつく抱き締めてくれた。
そして耳元でくすぐったく囁く声。



「お前が泣き止んだら考える。つーか何泣いてんだ」
「泣いて、なんか…!」
「ないって?これがか?ん?」



俺の知らないうちに流れ、落ちかけた涙を先輩が舌で拭う。
ゾクリとした感覚と同時に驚きがやってきて。
な、舐めたで今!



「…せんぱ」
「しょっぱい。これは涙だろ?違うってか?」
「すいません、涙です。でも、」
「…止まったな」
「はい」



縋るように先輩を下から見上げる。
背、低くてよかった。ちょっとは可愛く見えるやろか。いや…可愛く見られても不本意やけど。
とか思っていると、いつの間にか先輩は両手で俺の顔を引き寄せていて。
ほんの数センチのところに驚くほど綺麗で、俺の大好きな先輩がいた。



「遊依、この俺がお前を愛してやる。だから、」



そこから先は聞こえるか聞こえないかの声で囁き、そして言い終えるのとどちらが早いかくらいのスピードで深く強引なキスをした。

どんなに小さな声でも聞きます、先輩の声なら。例え心の声でも聞いてみせます。
塞がれた口から飛び出せなかった俺からの返事は心の中にだけある。
でもきっと伝わったと思う。いや…聞こえてたらいいな、が正しいか。


『だから、1ヶ月なんかで逃げんなよ』
『1ヶ月と言わず、一生つきまとうんで覚悟しといてください』

――1ヶ月後