「せんぱーい、これじゃ前見えへんから手繋いでくださーい。もしくはこれ元に戻してくださーい。」
「知るか」
「酷い〜!まあ、ええけど〜」



先輩の声が少し離れたことに気が付いて、やっぱ放置されるなーと自分でバンドを直すことにした、残念。
が、何故かそれは叶わず勝手に視界が明るくなった。
え!そんなまさか先輩が!と喜んだのも束の間。
目の前には知らん男が立っていて。



「やほー、はじめましてー。そういうプレイが好きなの?なら俺とちょっと遊ぼうよ♪」



誰やお前。



「今日が無理ならとりあえず連絡先教えてー。はい、ケータイ。」
「いやー、遠慮しときますわー。」
「あれ、関西弁?かわいーねー。」



ちょ、ほんま無理。先輩に置いてかれてまうやん。
てゆーかせっかくのデート邪魔すんなや。
と思う反面、喧嘩とか騒ぎにもしたくない。先輩に迷惑が掛かる。
出来れば穏便に済ませたい。



「今から連れと遊び行くんですんませーん。」



ヘラヘラと笑いながら交わそうと試みたが残念なことにそのナンパ野郎もヘラヘラと笑いながら俺の手首を掴んだ。



「なんか仲良くやれそーじゃん、俺ら。ねっ」
「気のせいですって。ね、やから離してください。」



ふと辺りを見ると先輩の姿が見えない。
…あーあ、置いてかれてもたやん。
先輩がいない、それがとてつもなく切なくて。不安で。
やっぱり俺じゃあかんのやなー、先輩の興味の一番にはなれんのやなーと思うと、堪えてへんと雨が降りそうで。
それと同時にこのヘラヘラした金髪野郎への怒りがふつふつと沸いてきた。