カツカレーで両手が塞がっている俺の二の腕を掴んだ一宮に連れられるまま、端のテーブルにつく。
向かいに座って満足そうな奴はともかく、確かに木津達と一緒に昼食を取る気にはならなかったから黙ってまたスプーンを口に運んだ。
「おい、水」
「あ!忘れとった!すぐ取ってきます!」
クルクルとパスタをフォークに巻き付けたばかりだというのに、一宮は嫌な顔一つせずセルフコーナーに小走りで向かった。
その背中を見遣りながらカツを咀嚼する。
並べてあるコップに指が当たったのか、ドミノ倒しになって一人で叫んでいる姿を見て周辺の奴らも含み笑いを零していた。
「…変な奴」
会って5分も立たぬ間に告白されて、俺にどうしろと。
顔はいい。今まで木津くらいしか居なかったが、俺の我が儘に付き合える程度にはパシられ気質なのだろうと推測される。
それだけである程度合格だが、たかがそれだけだ。
それに、付き合ってくれと言われた訳でもない。
「大河内先輩!お待たせしました!」
「ん」
馬鹿みたいに水を片手に二つずつ持ち帰った奴は、ニコニコと笑いながら席についた。
再びフォークを回転させながら、楽しそうにこちらを見る。
「先輩先輩、ユズ先輩て呼んでもいいですか?」
「却下」
「即答!?え、え、なんで!?」
「なんとなく」
「酷っ!でも好きです!」
一々反応がオーバーだ。
それはまぁ、見ていて飽きないかもしれない。
興味がない事はないし、このひたむきな想いの矛先が自分に向いているのは、絶妙な優越感を齎した。
「どこが好きな訳」
「わかりません!強いて言うなら顔ですかね!」
「俺は競争率高ぇぜ。遊依」
やれるだけやってみろよ。
仕方ないから、落とせたら愛してやる。
キョトリと目を丸くした奴は、瞬間糸程目を細くしてクシャリと笑った。