「え!!明輝ちゃん男出来たん!?」
「こ、声大きいよ!」
「あ…ごめんごめん。で?」
「で?」
「相手は誰なん?」
「…せ、んぱい」
「どの?」
「木津、陸先輩…」
「…マ、ジ、で?」


ある日突然、ほんまに突然、明輝から聞かされた事実。
2週間ほど前から年上のカッコイイ恋人ができました、えへっ★とのこと。
近頃これと言って胸踊る話もなかった俺としてはなかなか羨ましい。
うん、ほんま羨ましい。
うん、ほんま羨ましい。
大事やから2回言うてみた。



「何で黙っとったんー?はよ教えてくれたら冷やかしたったのに〜♪」
「なんか言いそびれたっていうか…」
「ほんまか〜!で、どうなん?ラブラブなん?羨ま」
「そっそれがね!」
「お、どないしたん…?」



珍しく明輝が積極的に話始めた。
と、思ったら想像以上にしょーもな……いや、可愛い理由で。



「は?緊張して喋れん?」
「うん…」
「やから昼飯を明輝と俺と木津先輩とその友達の4人で食べよう、と?おっしゃった?」
「遊依!お、お願い!」
「いや、別にええけど…」



とかなんとか言う妙な展開で、俺は明輝ちゃんの友人代表として先輩たちと対面を果たすこととなってしまった。

そして今、賑わう食堂の一角で噂の先輩とその先輩の友人とやらと向かい合っていた。



「えっと、明輝の友達の」
「あ、一宮遊依です。」
「一宮くん、な。こっちは俺の友達の大河内柚綺。」
「大河内…先輩。」



誰にも聞こえないくらいの声でポツリと呟いた小さな名前。
何故か先程からその名前の持ち主から目が離せない。
ついでに明輝の声も、木津先輩の声も、食堂の騒がしさも何も耳に入らない。
これは一体どういう意味やっけな?


あぁ、これって確か……『恋』ってやつやん!