ぐーるぐーる。
何の音かって?
俺が現実逃避する時の効果音だよぉぉぉぉ!!
【CRASH!】
何故こんな事に。
恨めしげにそう唸った時思い浮かんだのは、昨夜テレビで見たなんちゃらマーモセットって猿だった。ちぃっこい奴だよちぃっこい奴。ピグミーだかコモンだか知らねぇけど、とりあえずマーモセット。
テレビの中のチビ猿はでっかいおっさんの手に包まれて迷惑そうにもがいてた。人間側から見りゃ世話してもらって飯出て来て寝床もあんだからって思っちまうけど、きっとあいつらからしたら死ぬほど迷惑なんじゃねえかって今気付いた。
え?なんでって?
そりゃ、
「ちっさい」
「あなた様がでかいんですぅぅぅぅっ!」
俺、椎寺陽本人が、今まさにでっかい男にぎゅうぎゅう抱きしめられているからに他ならん!
ちっさくないぞ!俺の親友もこれくらいの体格だぞ!つかクラスメイトの殆どがこれくらいだろあんたが無駄に成長しすぎなんだよボケェェェ!
と、言ってやりたいがそんな事言った次の瞬間俺はきっと水死体の如くボッコンボッコンに顔を腫れ上がらせる結果になると思う。
だってこのデカイ男、基志方将也はあのBloodyの番犬様とやらだ。
いくらそのBloodyの悪魔とイチャイチャラブラブしてんのが親友だとしても、この人外な方々に逆らうような度胸俺には爪先程もない。
ちなみにデカイちっさいってアレの大きさじゃねぇからな。俺のビックマグナムは今日も元気に股の間でご健
「こっちもちっさい」
「ちっさくねぇぇぇぇ!!!!」
俺様の大事な大事なマグナムを揉むな!何が小さいだ小さくねぇよ含み笑いたぁどうゆうこっちゃぁぁ!
何を隠そう。俺、そしてヒナは同じ大学でウフフアハハなキャンパスライフを堪能している。はずだったが!
あの衝撃的な卒業式の日、何を思ったかこの番犬様は事あるごとに俺に目をつけて構い倒すようになった。いらん。
しかも学内で見かけたと思ったら、だ。
この人も同じ大学とかこれ悪夢でよねそうですよね!?
あんまり話さないから大人しい人なのかと思ったらいやはや口を開けば脈略のない単語しか言わないし、その分行動が破廉恥な事破廉恥な事。
俺が当事者じゃねんなら超面白可笑しいけどな。何故俺。
「ヒナァ…っ」
「あはは…マサ君はいい人だ、よ…?」
「顔引き攣ってっからぁぁぁ!」
必死に手を伸ばしてヒナに助けを求めるも、奴は案外薄情だ。
どう足掻いても手の届かないところまで後退り、悪魔こと旦那様の隣でのほほんと微笑んでいる。
ヒナがダメなら他に、と見渡したところで誰も助けてくれないのは、悲しいかな俺はちゃんと学習していた。
談笑する人、哀れそうに見てくる人、面白そうにニヤける人。
何このスルー加減。え?俺そんなに前世で悪人だったの?これってその分今世で苦しめって事?
「二人きり」
「あなたの目は節穴なんですか!?」
「シよう」
「耳もお飾りですか!?」
「昨日みたいに」
「頭部丸々飾りだったぁぁぁぁっ」
言い忘れたが今は授業を終えた午後の食堂だ。
俺達が授業ないからと言って、皆が皆ないわけじゃない。
つ ま り だ !
「めちゃめちゃ人居ますよねしっかり見て下さいよっ」
「気にしない」
「ダメだこの人日本語じゃ通じないぃぃ!」
俺が気にします!と言ってはいけない。
だってそう言った次の瞬間には、お持ち帰りすればいいのかとこの人の頭が結論付けるからだ。
お飾りのくせにな。そうゆーとこはちゃんと働くんだな。なんてど勝手な飾りだチクショウ!
「おーくーんヒナタちゃ……あ、またやってんのー?」
「太郎様……っ!」
「陽君ホント不幸な星の元に産まれたよねー」
だが信じられるだろうか。俺はまだ処女?なのだ!
何故か?んなもん、太郎様が毎度助けてくれるからだよ!動機がただの番犬様への嫌がらせだとしてもな!
今日もキラキラと笑顔を振り撒きながら食堂へやって来た太郎様は、いやに間延びする話し方のまんま笑った。
そして俺のアイフルチワワ顔負けのうるぅり光線に気付き、目を輝かせる。
助かった。そう思った。
「もー、やめなよねー無理強いはー」
「同意」
「ならいいやー」
NOォォォ!!!
どこから見れば同意したように見えるんですかねぇ!!
つかペロリと嘘こきなさんな嘘つきは泥棒の始まりですよぉぉぉ!?
「あの…マサ君…」
「ヒナっ!」
「なに?」
今日こそダメかもしれない。あぁさようなら俺の貞操。来世では守りきってやるからな安心しろよ、と方向の違う決意を固める努力をしている俺の頭上で、控えめで可愛らしいヒナの困ったような声が聞こえた。
ばっと顔をあげる。
番犬様もヒナには弱いのか、ちゃんと顔を見て話しを聞く体勢をとっていた。
たださ、手だけは既にズボンインとかやめてくんない?生ケツ撫でくりまわすのやめてくんない?ちゃんと話し聞こうよ不真面目もそこまでいくと感動するね!
「あのさ、」
困り顔のまま一度悪魔様を振り返ったヒナは、今度は満面の笑みで口を開いた。
さぁヒナちゃん俺に救いの
「そうゆうのは、家でした方がいいと思うんだ」
裏切られたぁぁぁぁぁぁっ!
「わかった」
「待て、待って、待ってくださいぃぃぃっ」
「陽大丈夫だよ、うん!」
「うん!じゃねぇよぉぉぉっ!」
「陽くんふぁいっと、オー!」
「応援するなら助けて!?太郎様ぁぁ!」
「うるっせぇなぁ」
ピタリと叫んでいた口をつぐんだ。なんて正直な俺。長いものにはぐるんぐるんに巻かれて生きて行きたいからね☆
とかキメてる場合じゃねぇよぉぉ悪魔様がキレてらっしゃるぅぅぅ!?
低くドスのきいた声を発せられた悪魔様は、本気で不機嫌そうに立ち上がりヒナの肩を抱いた。
ちょ、そこ!ほっぺ染めない!親友のメイクラブに興味はないから!
「さっさと×××を××ませて将也の××を×××んでもらって来やがれ。これ以上やかましくしやがんなら×××にてめぇの×××を×××させっぞ」
前世のわたくし。
あなたはなにを、しやがったのですか。
END
(ユズ宇宙語話せたの?)
(俺に出来ねぇ事はねぇ)
(…ヒナタちゃんって…)
(運びやすくなった)
(もう好きにして下さいぃぃ)