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団体さんご来店でーす、なノリで急に騒がしくなった風紀委員室。
俺からのったりと離れたタキさんは、俺でもびびる程凶悪に顔を歪ませた。

「何をしに来た。帰れ」
「祐希を迎えに来ただけなんで」
「いらん。帰れ」

バチバチ、と、タキさんと愁の間に火花が散る。
間に挟まれていた充は、さっさと資料を畳んでそっと部屋を出て行った。
チラリと俺にアイコンタクトをやるのも忘れない。

多分、俺無理、と伝えたかったんやと思う。
こんなとこに置いて行くなやと言いたいところやけど、色んな組織において下っ端の充にそれを言うのはあまりにも酷やと判断し、俺も苦笑いで返した。

「おー、てか爽やか君やーん」
「ん?爽やかって俺ー?」
「そうそう。歓迎会のんで一緒やったやん。俺祐希。爽やか君は?」
「木津陸!陸でいーぜ!」

爽やか君改め陸は睨み合うトップ二人と、我が物顔で寛ぎ出したその他多数に動じる事なく俺の隣に腰掛けた。
よく見れば親衛隊のつきそうなお顔。それだけで肩を叩いて労いたくなるんは何でやろう。

「俺も祐希でええで。風紀なん?」
「そ。友達が先輩に連れてかれたから遊びに来たんだけどさー、廊下で変な人達着いてきちゃってー」
「きゃー災難ですわね奥さん」
「そうなのよわかるー?」
「あなた達気持ち悪すぎて吐きそうです」
「「うるさい!」」

陸は見た目通りノリがよくて、圭の嫌味へツッコミすんのが被った。
それがおかしくて、何でかわからんけど妙におかしくて、二人同時に腹を抱えて笑う。

そうこうしている内に他のメンバーも、ゾロゾロとソファに座った。

でもどんなに広いとは言えソファには座れる人数が決まってて。
合計10人。ソファは三人掛けが一脚と四人掛けが一脚。

さぁどうする、と全員の心に浮かぶ。

「蒼空、おいで」
「え、わぁ!ヤダよインチョ、恥ずかしいじゃん!」
「私の傍に居ると約束したのでは?」
「…っ…ちょ、反則だって…!」

先に座っていた圭はひょいと蒼空を持ち上げ、あろうことか自分の膝の上に乗せて体の前で腕を組んだ。
蒼空は顔を赤くして暴れるが、圭のエロボイスで撃沈。ご愁傷様です。

さて後一人分はどうするか、と微妙な雰囲気が漂う中、一番最初に動いたのは愁とタキさんやった。

「「祐希、来い」」
「嫌や」

見事にハモる二人。でも却下。理由は簡単!何となく!

しかも俺は見てしまった。
優雅に座る翔さんの隣で従者よろしく立ったままの一之瀬さんが、翔さんに声をかけようと動いたのを。
きっと圭と蒼空みたいに膝に座ってほしかったんやと思う。
でも愁とタキさんの声にかきけされて、結局声すらかけれんと悔しそうな顔をした。

アカン、ヘタレすぎる。

「なんでだよ!」
「遠慮する必要はないぞ祐希」
「絶対嫌。…それやったら…」

チラリと、行儀悪いの覚悟で肘置きに座るとか地べたに座るとかも考えたけど、さすがにこの学園は土足やからいくら掃除してて綺麗でも気が引けて。
体重とか体格差の面を考えたら、俺が誰かを膝に乗せんのは難しいし。
や、翔さんやったら乗せたい。
でもそれって一之瀬さんにめちゃ嫌われそう。

ぐるりと今居るメンバーを見渡して、俺は立ち上がった。
目的の人物は俺と目が合うと、悠々と腕を広げてソファに腰掛ける。

「ちょい重いかもしらんけど、ごめんな」
「………いい。軽い」
「「……っ!」」
「あーっはっはっは!会長も委員長もフラれてやんのー!」
「いい気味だね」
「ゆーちゃん、俺の膝でもいいのに…」
「くはっ…あは、ユウ、サイコ…っ!」
「こらこら蒼空、あまり笑っては彼らが惨めですよ」
「はぁ………」

一之瀬さんの溜め息が再び騒がしくなった室内に溶ける。
慣れた要の膝に腰掛けてもたれると、いつものように要はぎゅうと俺の体を支えるように抱きしめた。

愁とタキさんは空いたスペースに座りもせず要を睨んで、要はしらっと違う方向を向いてて。
陸はいつの間にかお茶をテーブルに置いて、兄ちゃんと翔さんは二人で会話に花咲かせて。
蒼空はアホみたいに笑ってるし、圭は咎めるフリしながらさりげなく蒼空の頭撫でてみたり。

随分とグダグダ。
それでもこんな日常が最高に大切で宝物やと、俺は噛み締めるように笑った。



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