恥じらって、脱いで











一通り口の中を楽しんだ所でバニーが体勢を変える。身を起こし頭を挟むように両側に手が置かれ、俺の体を跨ぐように膝立ちで覆いかぶさる。
―――気を使っちゃって、まぁ…
軽くなった負担に苦笑を浮かべ顔を覗きこむと、夕焼けではない朱に染まったバニーの頬が可愛く見えた。何とか俺に負担をかけない様に手足に力を入れて、自分のその小さくは無い体を支えようと必死になっているのが健気で可愛い。
「別に気にしなくっていいぞ。ほら、もう傷は塞がってるんだし」
「それが開いたら困るから気を使ってるんですよ…僕はナースコールなんて呼びたくありません」
さっき着たばかりの上着を再び脱ぎながら心底嫌そうな顔でそう言う。あまりにも嫌そうな顔で言うので思わず噴き出しそうになった。
「そーか…おい、バニー。腹は流石に不味いが足の方はほとんど怪我してねぇんだ。ちょっと後ろ下がれ…そうそう。んで、腰おろせ」
片手で体重を支え、片手で袖から腕を抜くのが大変そうなバニーの様子を見て場所を移動させる。恐る恐る、と言った様子で足にバニーの重さがかかる。
「痛くないですか…?」
「全然」
でも関節は痛いから膝の上はやめてね、とお願いしながら、昔娘を足の上で遊ばしていた時を思い出した。こんな状況で、思い出すべきじゃないって事は重々承知してるが。
あぁ、人の重さは確かにこんな感じだった、と。
離れた肌の温度を名残惜しく思いながらも、同時に新たに生まれた人を認識する感覚に嬉しく思い、両手で上着を脱いだバニーに声をかける。
「あぁ、でも手は届かないから、全部自分で脱げよ」
途端にその動きがかちっと止まる。ちょうどシャツに手をかけようとしていた所だったので、もう少し後で声をかければよかったと後悔した。
「っ…!別に、脱がなくっても」
自分から脱ごうとしてたじゃんか。シャツにかかった手を離そうとした手を掴みそのままめくりあげる。ほら、脱いで脱いで。
「脱げよ。久々にバニーちゃんの肌に触れられるんだ。楽しみにしてたんだからよ」
そう言って手を離さずにいると渋々と言った様子で動きを再開させる。
「………」
その顔がやけに恥ずかしそうで、何ともいけない気を起させる。まぁ、普段の役どころはともかく俺も男だと言う事で。
夕日はとっくに沈み、自動で点いた室内灯の白い明りが室内を昼間と変わらぬ明るさで照らしていると言うのに、バニーの頬はまだほんのりと赤い。
バニーの上半身が裸になった所で傷に響かない様にゆっくりと体を起こす。背凭れがキシリと小さく鳴いた。
下半身も脱ぐべきか躊躇居俯いて居るバニーの腹に手を伸ばす。
「あー…やっぱ俺よりましとはいえちょっと傷になってんな。これ、残らねーといいけど…」
「っ、…!」
伸びた手に気づいていなかったのか、痛かったのか、それとも別の理由か。
何度もバリアに直撃し、ようやく湿布が取れたばかりの右脇腹がビクリと震え、小さく息をのむ音。
「ごめん、痛かったか?」
それでも手は離さずに、温めるかの様に掌全体を軽く押しつける。痙攣する様な僅かな振動が不規則に手の中を走る。
このまま大人しくされるがままになってくれててもいいだろうに、俺の相棒はすぐに冷静になってしまう。脱いだ服を軽く丸めてベッドの隅に追いやり、前のめりに体勢を変える事で無理やり俺の手をどかした。ぐっと近くなるバニーの顔。
「痛みはもうほとんどありません…なんだか普段と立場が逆ですね。あんまり触らないで下さいよ」
手首を掴んで俺の左手をどけようとするので離すついでに指先をジーンズに引っ掛ける。だったら代わりに脱げと言わんばかりに。
「えー、それは無理だわ」
やれやれと一瞬だけ眉間に皺を寄せ呆れた様な顔をしながら、ベルトを外しながらまた膝立ちになる。
軽くなった俺の脚の上を跨ぐバニー。耳に残るチャックの音と共にずるりと少し名残惜しげにジーンズが下がり落ちる光景に口笛を吹きたくなった。
「だってバニーちゃんの生ストリップショーよ?」
俺の言葉に焦ったバニーの手から完全にジーンズが滑り落ちる。
「っ!?また貴方は、そうやってオヤジ臭い事を…!」
膝で引っかかったジーンズを慌てて引き上げようとするので足を立ててバーナビーのバランスを崩す。そりゃないだろう。
案の定足に絡まる布のせいで上半身のバランスを取るのが精一杯のようで彼の余計な動きは封じる事が出来た。支える為に肩に手を置かれ体重をかけられた事と恨めしげに睨まれた事は少し痛かったが。
「そう怒るなよ。ほら、俺に見せて。怪我してるバニーちゃんなんてレアなもん、そうそう見れねぇんだしさ」
「ちょ…どこで覚えてくるんですか、そう言う触り方…!」
「んー…?」
太股を撫でまわす。こちらも大小いくつか痣と包帯が残っていたが能力無しで何十分も戦ったにしては少ない方だ。流石斎藤さんのスーツ。それと直撃を免れるだけの機動力のおかげだな。
「せめて灯りを…」
煌々と照らされる室内で俺に好き勝手されるのが居たたまれないのか枕もとのスイッチに手を伸ばそうとする。
「あー…それは駄目」
太股から内腿に、そしてそのまま指の背と爪で優しく優しく、足の付け根までなぞりあげる。どうよこれ。個人的に直撃コースなんだけど。
バニーちゃんも気に入ってくれたのか延長線上のバニーちゃんの腰が刺激に反応する。
「何で…って!おじさ…マジで問い詰めますよ」
スイッチに手を伸ばす事は諦めた様だが、代わりにその矛先は俺への怒りになった様だ。あーあー、目の前のコレは素直に喜んでくれてるんだけどなぁ。
「おー、怖い怖い。安心しろって。これは…」
足の付け根から下着の中に指を入れて無遠慮にかきまわし、怯んだ所で腰から下着をずり降ろす。直接の刺激なんか微々たるものだと言うのに半分ほどたちあがった立派なモノが顔を出した。
あー久しぶり。
太股を救う様に手を当てちょっときつめの力で会陰に親指を押しあてる。
「バニーちゃんの触り方。な?」






コンコン








見て判るほど堅さを増したバニーがビクリと震える。
「っ!?」
白いカーテン越しに見やるのは病室唯一の入り口。息を飲む間もなくプシュ、と小さな空気音と共に人の声。
「お夕食の時間ですよ。鏑木さん…」
カラカラとトレーを押す音にバニーの体が硬直する。さっと血の気の引く蒼い顔。あぁ、萎えちまった。残念。
焦るバニーが面白かったがこれ以上入ってこられると誤魔化しが聞かないので出来るだけ通る声で、看護師を制する。必要無いかもしれないが片手で耳をかく様なポーズまでして。
「あー、ごめんなさい。ちょっと今娘と電話中なんですよ」
ギョッとしたように顔をこちらに向けるバニー。動くなよ、と唇だけで合図する。本日二度目の衝撃は油断していただけに大きかったのだろう。彫刻の様に体はピクリとも動かない。
「あら」
カーテンから顔を半分ほどだしながら入院中なの内緒なんだよ、と情けない風に言うと事情を知っている看護師は判りました、と室内に踏み込んだ足を止める。
「飯はリハビリも兼ねてそこのテーブルで食べるから、置いといてもらっていいですかね?出来るだけあったかいうちに食べますから。食い終わったら、廊下に出しときますんで」
「わかりました」
電話を慮って囁く様に小さな返事が返ってくる。俺は、ん?あぁ、なんでもないよテレビテレビ。それより今日は学校で何習ったんだ?、と居もしない電話の相手に話題を振り続ける。バーナビーを眺めながら。
トレーを置く音と極力気を使ったであろう小さな足音、そして入ってきた時と同じ空気音が響くまで、その滑稽な芝居は続いた。唯一の観客者の緊張しきった瞳の前で。
防音の壁のさらに向こうの足音まで細心の注意を払って聞き届けた後、固まるバニーを溶かす為に笑顔を向ける。
「ふー…危なかったね。バニーちゃん」
そこでようやく魔法が解けたかのようにバーナビーの肩が緩む。
「危なかった、じゃないですよ…」
そのまま俺の胸に頭を預け盛大なため息をつく。耳が赤い。蒼くなったり赤くなったりと、大忙しだったようだ。はいはい、ごめんな。びっくりしたな。
「も―大丈夫だって。飯の後は消灯後、10時過ぎまで見周りも何にも無いから。もう心配無し」
何でもない様にそう言うとゆっくり顔を起こす。まだ恥ずかしさが残ってるのか、伏目がちなその顔は不満そうだった。
「タイムスケジュール把握してるなら、夕食が終ってから…」
その顔が驚きと怒り、そして呆れに変わる。
「ほーら、だから俺の服は後でにしといてよかっただろう?よかったな部屋に明かりついてて。影でバレる所だったぜ」
「……!!」
全部確信犯か、このオジサンはっ…!
沸騰する様なバニーの怒りを肌で感じた。此処が病室で無かったら大声で怒鳴り散らすぐらいやってのけただろう。
まぁまぁ、と頭を撫でで宥めかす。
しばらくは威嚇の様に息を荒げ怒りを露わにしていたが、下半身丸出しでその状態を持続するのが疲れたのだろうか、割と早く落ち着きを取り戻したように見えた。
「で、オジサンご飯食べなきゃいけないんだけど…」
一緒に食う?なんて軽く言ってみると、心の底から呆れた様な声で返事が返ってきた。
「これ以上我慢できませんし、邪魔もされたくないんです。半分僕も食べるんで速攻で食べて下さい」
切り替えが早いもので萎えた物を早々に下着に仕舞いジーンズをベルトを止めると同時にベッドから降りる。もうちょっと名残惜しそうにしてくれてもいいだろうに。
「えー、俺そんだけだと夜中にお腹すいちゃう」
射殺されそうな目で見られた。怖いって。
バニーは無言のままベッドに備え付けられた食事用のテーブルを手早くセットすると、その上に食事の載ったトレーを置く。
上着は羽織ったがシャツは脱いだままベッドに転がっているのでやる気は衰えていない様だったので。
「へいへいほら、食わせてよ。あーん」
ちょっと甘えて大きく口を開けると喉奥までフォークをつっこまれた。


















(いいからさっさと食べて下さい…!)


…to be NEXT…








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