+β





足首を掴んだままゆっくりと広げる。咄嗟に制止しようとしたオジサンの目を見たまま膝頭に音を立ててキスをする。目が合った瞬間に体が固まって目元に朱がかかる。うるんだ瞳は未だに熱を放出した余韻に酔っていて、悔しそうに何も言えず引き締めた口元は舌でこじ開けてやりたいほど愛らしかった。
「オジサン、後ろ向いてくださいよ」
ぐっと顎を引いて一瞬ためらったが腰を浮かす様に手をそえると素直に体をひっくり返した。最後までこっちを涙交じりに見つめていた目には動揺と困惑と期待。7割近くが不安であるのは残念だが男相手なので仕方ないと言えば仕方ないだろう。自分も、内心不安は多い。行為がどうこうというのではなくその行為を経た後で確実に変わってしまうであろう彼との関係が、予想以上に己をナーバスにさせているようだ。
しかし、それも激しい情欲の前では流されてしまうようで自分のいきり立った自身が僅かに痛みを訴える。
オジサンの腰を引き寄せて四つん這いの形にし、気づかれぬよう下半身の衣服を脱ぎながら身を寄せる。
「み、見るなよ…っ!」
指を入れられる所を眺められるのがよっぽどの羞恥らしい。下がって行く腰は喧嘩に怖気づく犬の様だ。
「はいはい、判りましたよ」
下手に意地を張ってられる状態ではない。今日の所は、と心の中でつけたし体を上にずらす。肩に顔をうずめるように。
「これなら見えないでしょう?」
「…耳に、息が近い」
「あぁ…耳が弱いんですか?」
「ひゃっ…!?」
本当に、感度がよくて困る。
「指、入れますね」
「…っ……!」
先ほど出された残滓をローション代わりに塗りつけながら指先を入れると息を詰める。止めたら辛いですよ、と宥めかしながら耳を軽く噛む。
一瞬ビクリと肩が震えて入口がきつく締まったが、そのあとゆるゆると力が抜けた様に収縮を繰り返し次第に力が抜けていく。
指一本。思ったよりは楽に入った。
苦しそうではあるが痛そうなそぶりは見られないのでちょっとほっとした。
丁寧に時間をかけてほぐそうと思っていたが一度イッたせいかオジサンの体力の消耗が激しい。ちょっと厳しいかもしれないが中指に添えるように人差し指をそっと差し入れる。
「うぁ…ふ、ぁ…?」
意識が朦朧としていることが幸いしたのかすんなりと入る。此処まで来たらあとは一気だ。
「ほら、気持ち良くしますから。しっかり覚えなきゃだめですよ?」
慣れない感覚がむず痒いのか小さく揺れる腰に手を添えて固定する。ほぐす様にまさぐっていた指先に意識を集中させ指先で壁を探りながら、注意深くおじさんの表情を見ると一点で目が見開き歯を食いしばった。
見つけた前立腺は最初は優しく、徐々に刺激を強くしていく。
「ん、んー…っ」
くぐもった声と指が奏でる粘着質な音だけが響く。
気持ち良い所をオジサンに覚えさせるのと同時に自分もしっかりとその場所を記憶しておく。後で沢山攻めてあげなきゃ。
必死に声を抑えているオジサン相手に会話なんかできないので極力事務的に、急いで、でも焦らずに中を解す。
そろそろ、かな。
入口あたりは十分に解せた。此処まで我慢できた自分を賞賛したい。自身は刺激を与える必要もない程猛っている。
本当はこのまま後ろからの方が負担は少ないのだろうけれど、最初だからやっぱり顔を見てやりたい。
「オジサン、こっち向いて。正常位でやりますよ」
「ちょっと…休憩…してぇ…」
「駄目に決まってるでしょう。もうこっちが持たないんですから」
しっかり元気になってるくせに、とひっくり返した正面に勃つモノを指でつつく。
ブルンと大きく揺れるものは可愛げが無いが自分に反応しているのは喜ばしい。そのままなぞる様に後ろに添わせ指で少し広げながら自身をあてがう。
声をかけると力を込めそうなので無言で、突き入れた。
「っっ…くっ!?」
あぁ、苦しそう。息が詰まって、歯を食いしばって、掴む物が無いから堅いであろう椅子の端に必死に指を食いこませてる。
ごめんなさい、と初めて謝罪の言葉が胸に浮かんだ。
無理させて、つらい目にあわせて、それでも僕を受け入れさせてごめんなさい。逃がす気なんて無かったから無理矢理でも繋ぎとめたかったんです。本当はきちっと口説いて、優しくしたいけれどその間に逃げられたくなんか無いんです。
今までも、そしてきっとこれからも沢山傷つけるだろうと判っているのに手を伸ばして、ごめんなさい。
自分の気持ちは後悔に近い。貴方に対してこれ以上失礼な感情も無いだろうに。
一瞬バーナビーが自分の心にのまれかけた所に虎徹の手が伸びる。頬に触れる。
目じりをそっと撫でた後、ほっとしたように息をつく。
「良かった…泣いてるわけじゃねぇんだな」
僅かに微笑んで。
「今、俺の視界潤んでるから、さ。バニーちゃん、泣いてるのかと思ったぜ」
いつも通りの笑顔をくれる。
「それともやっぱ駄目だったか?こんなオジサンだし…」
その笑顔が一瞬不安げに曇ったのが愛しくてたまらなくて、今の状況も忘れて抱きしめた。
「ぎっ……!?イダ、痛いよ、バニッ…!!」
「ぇ、あぁ。すいません…でも、なんか…」
急に押し付けられた中が苦しくて喘ぐオジサンに謝りつつも離す気がしない。離せない。
あぁ、もうこの人は馬鹿だ。そして自分はこの人の馬鹿さ加減にこんなにも救われている。
「オジサン、大好きです」
「俺もだよ。好きだ」
優しくぽんぽんと頭を撫でてくれた。
大好きに対して好きとか、ちょっと失礼じゃないですか、と文句を言おうかとも思ったが初めて好きと言ってくれたので、まぁ良しとしよう。
「…動きますよ」
「ん…」
抱きしめて密着した腰をゆるゆると動かす。ゆっくりと痛くない様に。
「くぁ、はっ…うぁ……ふ…」
「は…ふっ…」
お互い荒い息だけが互いの耳元で聞こえる。
あぁしてやろうだとかこうしてやろうだとか思っていた事は何一つ実行できないが、それでもよかった。
必死になってぶつかるから必死になって受け止めてくれているんだと。
「ふあぁっ…!?」
一際高い声でそこがオジサンの前立腺だと思いだした。
さっきあんなに頑張って覚えたのに台無しだ。腰を引いて狙いを定めてからカリで擦りあげる。くっ、と息をのんで中が締まった。
「オジサン、一緒にイキましょう…っ」
その刺激で余裕を無くし、せめて一緒にとオジサンの物に手を伸ばす。
だらだらと漏れた先走りがオジサンも限界に近い事を示していた。ギュッと握って離して握って離して。
ゆっくりと撫でると物足りなそうに呻いたので少しきつめに力を込めて追いつめる。
先端に指の腹を押し付けた所でドクリと大きく脈打って握ったモノの体積が膨れ上がったので、合わせるようにこちらも腰の動きを自分の為に早くする。
「オジ、サン…っ」
「ふああぁっ……!!」
絶頂の瞬間に目があった気がした。
泣いて無いか確かめる様なその顔にどうしようもないほど安心した。




体を離すともうくたくたで、目を開けられるようになるだけでもだいぶ時間がかかった。息が整ってもバーナビーは上半身を少し持ち上げるだけがやっとで未だ折り重なる様な体勢のままだ。
「なんだよ、余裕そうな振りしてっけど、お前も結構いっぱいいっぱい、なんだな?」
疲れ切った僕の顔を見てオジサンが苦笑する。オジサン自身、今日一日色んな事があり過ぎて、もう笑うしかない。
「俺、ずっとさ、感情がともなわねぇ恋愛の楽さに慣れきってたんだろうな」
もう、お前の告白聞いた時は動揺したのなんの、と今だから言える事と明るく笑って話す。
聞き様によってはかなり遊んでいるような発言なのだが、今は深く追求しないでおこう。
僕がオジサンを受け止めますから。オジサンが僕を受け止めてくれたように。
「この年で一から恋愛するのも悪くねぇって思った所なんだ。ゆっくりいこうぜ」
さらりと、前髪を撫でる。
「オジサンを本気にさせちゃった責任、きちんと取ってあげますよ」
だからまず、シャワー浴びてベッドに行きましょう。
そう口にはしたけれど肌を離す気にはなれなかった。お互い様なんだろう。オジサンも僕の髪を弄ったまま動こうという気配が無い。
広くても椅子でしかないこの場所でお互いにくっつき合っているという事は明日の関節や筋肉は痛みでボロボロである事は約束されたも同然なのだけど。それでも構わない。
そう思いオジサンの胸に頭を預けた。
胸がつぶれて苦しいのかうっ、と一瞬呻ったが、直後にまた頭を軽く撫でてきた。
オジサン、ごめんなさい。ありがとう。









これは後悔じゃない。懺悔だ。だからどうか許して下さい。この悪人の恋を。








(僕の全部を捧げます。だからどうか、僕に全部を)







END




オジサンの愛でバーナビーの邪心が浄化されました(ぇ
初めてなので本番はかなりいっぱいいっぱい、ぬるい感じです。すいません。
慣れた頃の裏も書きたいと思っていますので。







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -