+α





「オジサン…そろそろ泣きやんでくださいよ」
「うぇ、うぇぇ、っ………」
だって、だってお前が…とえづく様に泣きはらした顔をあげる。
正直、引くと思ってた。
30後半のオジサンが恥も体面もかなぐり捨てて自分の胸の中で大泣きしてるんだ。自分より一回り以上年上だぞ。
さっき威勢よく怒鳴り散らしたって言うのに今は肩も指もプルプル震えてる。止める術を知らないのか涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔。垂れ目の目じりが普段よりも下がってるように思えて凄く情けない。そこからこぼれる涙、涙。
これを可愛いと思うなんて。どうかしてる。
そのうえ、あろう事か…欲情までしている。
触れるオジサンの肌の感覚を意識するたびに下腹が熱くなる。
泣き顔にクル、なんて経験は今まで無かったがどうやら自分はそういう性癖らしい。オジサン限定かもしれないが。
お互い両思いだし、自分の行動に責任が取れないような子供ではない。問題無い所か至極自然な流れだと自分を納得させる。男同士だとか職場の同僚だとかは思考の外に蹴り飛ばし。
「泣き止ませて、いいですか?」
猫背のまま胸に顔を寄せるオジサンの後頭部に両手をあててギュッと抱きしめる。どうか、まだ泣いてて。口実を失わないように。
「優しくしますから」
つむじが見える。
体格はともかく身長差はほとんどない。常に隣を歩いているし、帽子もしている。最初に彼のつむじは見たのは初めてこの部屋に来た時、無許可でリクライニングチェアの隣に座りこんで酒を要求してきた時だった。
今思えばあの時から…と当時の自分の気持ちを思い出しながら綺麗な渦の真ん中に唇を落とす。
「ね?」
瞼にキス。あふれた涙は舌で舐め取る。塩辛い味がした。
キスどころか舐め取った舌の感覚に驚いたのだろうか。オジサンの涙の勢いは止まっていた。ぱちくりと擬音がしそうな、見開いた金茶の眼球が目前で揺れる。
「ほら、鼻かんで」
机の端に置いてあったタオルを顔に当てて鼻をかませる。子供みたいに素直に言う事を聞いてくれたのがなんだか無性に嬉しかった。
悪戯でちょっと鼻を摘まんだら息を詰まらせ凄く不細工な顔になった。かわいい。
そのまま摘まんだり放したりを繰り返してからタオルを外すと口で大きく息をする。悪戯に怒ったのか少し不満そうな顔。
子供みたいな拗ねかたをもっと近くで見たくて顔を寄せ、ぺろりと鼻を舐める。
びっくりしたように肩を震わせた。
可愛いからそのまま鼻を軽く甘がみ。ビクリ、と今度は怯えで肩がふるえる。あぁ、もう駄目ですよ、オジサン。
かわいい、かわいい、かわいい。
悪戯だけじゃ済まなくなる。済ませるつもりなんてもう毛ほども残っていないけれど、最後の最後の砦まで貴方が吹き飛ばしてしまった。
手を腰に回し引き寄せる。
互いの腰骨の硬さがぶつかる。抵抗のつもりか腰を引くが逃がすつもりはない。力づくで抑え込むと、どうしたらいいかわからないのか困った様子で見上げる。
「バ、バニー…」
真っ赤な顔でプルプル震えて。
我慢の限界だ。



リクライニングチェアに肩を押さえつけて押し倒す。
え、とかちょ、とか制止の声は全部キスでねじ伏せる。
瞳に涙がたまるまで、涎が飲み込めなくなるまで、肩を掴む指に力がなくなるまで。
ずっとずっとキスを繰り返す。
啄ばむ様に下唇を吸い上げ甘く噛みあげる。歯並びがいいのか伸ばした舌の先には均等に堅い感覚。時々息つぎの為に顔を離してやると悩ましげな吐息が漏れる。
息苦しいですか、とネクタイに手をかけて緩める。
「い、息苦しいどころか、息出来ねぇよ、バニー…」
力の抜けた様子にいっそ息などしなくてもいいのに、と独占欲が顔を出す。
顎にキス。舌に髭の感覚。自慢の髭を涎でべちゃべちゃにしたらオジサンは怒るだろうか。
好奇心が顔をあげるがどうやらそれ所ではないらしい。天井を見上げる焦点のぶれた瞳。意識が混乱してるのはこちらとしては好都合だが反応が無いのは寂しい。ほら、こっちを見て。
大きく食らいつくように口を開け、喉に犬歯を引っ掛けたまま頭を胸へと下げる。シャツを脱がせていくと外されたボタンとは別の堅い感覚が指先に当たりほくそ笑む。キュッと摘まみあげると痛そうに眉をひそめた。
肌に堅い歯の当たる感覚に怯えるオジサンが可愛い。慣れない痛みに震えるオジサンが可愛い。もっと怯えて欲しい。僕だけを見るように。
乳首に歯を立てる。
放してもしばらく元に戻らない位強く噛んだせいだろうか。半泣きのオジサンが流石に抵抗した。
ただでさえ狭い椅子の上で左右に肩を揺らして逃げようとする。完全に組み敷かれた状態で逃げだすことなどできはしないのに。しぶしぶ顔をあげると歯が離れた事には安心したようで、身をよじるのはすぐに止めてくれた。
半泣きで、口を開いて息をする。縋る様に見ないでくれ。
「駄目じゃないですか、オジサン。暴れちゃ」
「…だってお前、ずっと黙ってるし、怖えーよ…」
無言が不安を増長させたようで、迷子の子供が親を見つけた様にじっと目を離さない。
それじゃぁ見てて下さいよ、とオジサンのズボンのベルトに手をかける。
咄嗟にズボンの端に指をかけて阻止しようとしたので脱がすのは止めて取り出すだけにする。羞恥に耐えるようにきつく握った指が少し白いが抵抗はしなかった。いい子ですよ、と手の先にキスをしてそのまま顔を寄せる。
他人と見比べる趣味は無いので特別大きいとか小さいとかいう感想は無いが、なんと言うか年相応の年季を感じる代物だった。
全く頭がおかしくなりそうだ。こんなものがおいしそうに感じられるんだから。
軽く勃ち上がったモノを二、三度扱くとみるみる硬くなる。年の割には反応いいじゃないですか、オジサン。
見上げながら先端を口に含む。味はともかく柔らかい感覚はなかなか癖になりそうだ。
「…ひっ…!」
びくつく体は腰を押さえつけてモノが口から離れないようにする。
逃がすわけ無い。
犬歯を軽く立て、ビクリと反応した所を奥まで咥えこむ。
「ぅ…わ、おまっ……!?」
焦った声が頭上に響く。流石に喉奥までは苦しいが角度を変えれば何とか根元までは口に含む事が出来た。
ちらりと見上げると信じられないものでも見るようにこっちを見下ろす瞳と目があった。動揺が、手に取る様ですよ。
ふっと微笑んで舌で口の粘膜に押し付ける。先端に奥歯を立てる。大丈夫、痛い事はしませんから。
「うぁ、はぁ……っ」
息が荒くなる。
自分がオジサンを追い詰めてるという感覚がどうやら自分には一番クルようだ。
もっともっと、自分を求めて欲しい。もっともっと、自分は愛されてると実感させて欲しい。
そろそろ限界かというタイミングで口を放す。
「…はぁ、ぁ…あ?」
名残惜しいのはお互い様。でも此処で飲み込むわけにはいかないので。
両手で包んでカリ首を親指を揃えて置く。そのまま揉みしだき、絞り出すように指先に力を込める。
ほら大丈夫、と安心するように優しくキスをする。
「……ぁ…は、ん…っ!!」
ちょっと力を込めすぎたかと言うぐらいで一際大きく震えたオジサンに、達した事を唇にキスしたまま確かめる。掌に熱い粘液。顔をあげると放心しきったオジサンの顔。
ふっ、と笑いがこみ上げる。
これからもっとすごい事するのに。
体を離してしゃがみこむ。足首を掴んで軽くあげ、足の親指にチュ、っとわざと音を立ててキスをする。
今日これから頭の先から足の先まで、全部全部僕のものになる。





(ほらオジサン、腰上げて下さい。それとも自分で広げますか?)














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