あの戦いが終わり、千鶴ちゃんの故郷に住むようになってもう三月位にはなるだろうか?戦いで負った傷は癒え、羅刹の衝動も殆ど感じなくなった。日差しが当たる場所にいると少し眠くなる位で。

でもそれが心地よくて、僕は天気が良い日には僕達が暮らす家の前にある木の下で昼寝をすることが趣味になっていた。今日も暖かいから、昼を食べた後に外に出て木陰でうとうととしていた。
すると、家の方からこっちに向かってくる足音が聞こえてきた。目を開けなくても…誰のものかはすぐに分かる。

「…千鶴ちゃん」
「もう沖田さんはまたこんなところで寝て!まだ寒いんですから…このままだとお体に障りますよ」
「君は少し心配し過ぎ。僕は全然平気だよ」
「でも…」
「じゃあ、今起きるから。千鶴ちゃん、手を引いてちょうだい」
「あ、はい!」
「――隙あり!」
「え…わっ!?」

千鶴ちゃんが僕に向かって手を差し出した瞬間に、僕は彼女の腕を思い切り引いた。そのことによって体勢を崩した千鶴ちゃんは、僕の膝の上に乗る形となった。

「千鶴ちゃん、捕まえた」
「ちょっと沖田さん、離して下さい!」
「だーめ」

僕の膝に乗っかって向かい合っている状況が恥ずかしいのか、千鶴ちゃんは顔を真っ赤にして俯いていた。全く、君はどうしてそう可愛い反応ばかりするんだろうか。

「え、どうして」
「千鶴ちゃんに話しておきたいことがあるから」
「今、ですか?」
「そう、今」

ここでの生活が落ち着いてきたら言おうと思っていたことがある。こんな流れで言うのはちょっとどうかなとも思ったけど――それでも言いたくなったんだから仕方ない、か。

「ね、千鶴ちゃん。僕のお嫁さんになってくれないかな?」
「え…?」
「勿論断ってくれても良いよ。僕は絶対に君を置いて行ってしまうから…君を寂しがらせてしまうから」
「っ…沖田さんの馬鹿」
「え」

千鶴ちゃんから返って来たのは思わぬ言葉だった。さっきまで俯いていた彼女が、今は――僕の目を真っ直ぐに見つめていた。

「断る訳ないじゃないですか。私は…沖田さんが好き、なんです。だから…私を沖田さんのお嫁さんにして下さい」

その返事があまりにも嬉しくて、千鶴ちゃんが愛しくて――僕は彼女を強く抱きしめた。幸せ過ぎて、どうにかなってしまいそうだ。

「…ありがとう。僕のお嫁さんになってくれて、本当にありがとう」
「沖田さん…」
「あと、もう一つ良いかな?」
「え?」
「これからは夫婦になるんだし、僕のこと名前で呼んでよ」
「…ええっ!?」
「僕も千鶴って呼ぶし。ね、今呼んでみてよ」
「………うじ、さん」
「聞こえない」
「っ…総司さん!」
「良く出来ました」

僕の名前を呼んだ愛しいその唇を、一瞬だけ塞いだ。顔を離すと、千鶴が顔を真っ赤に染めていて、それが可愛くて僕は笑った。

もう怖いものなんて何一つない。だって僕は今――永遠を手にしたのだから。


掴み取った永遠

(僕の永遠は――君なんだ)



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運命論者様に提出させて頂いたものになります。「掴み取った永遠」というお題でしたので、沖田にとっての永遠=千鶴ということで沖千を書かせて頂きました。甘い感じになったでしょうか…?
久し振りにこのような企画に参加させて頂きましたが、とても楽しかったです!主催者のMeko様、本当に有難うございました!