「……暑い」
「はあ?」
「暑い。あーつーいー」
「何言ってんだ、お前」

学校からの帰り道、校門を出てから殆ど口を利いていなかった望美が漸く口を開いたと思ったら、出てきたのは暑いという言葉だけだった。この暑さに機嫌を悪くした様子の望美に、将臣は呆れた口調で言葉を返した。

「だって、暑いんだもん」
「夏なんだから仕方ないだろ」
「私は将臣くんみたいに割り切れないの!もう暑くて死んじゃう」
「お前な…」

これでは駄々をこねる子供だ、とますます不機嫌になる望美を目の前にして将臣は心の中で呟いた。
こんな風に望美が我が儘を言うのは自分の前だけであるという自覚は、多少なりともあった。それはつまり望美が一番気を許しているのが将臣であるということで、その事実を勿論嬉しく思っているのだが、流石にこのままの状況が続くことは厄介だ。

「望美」
「なに」
「ちょっとそこで待ってろ。すぐ戻る」
「将臣くん!?」

しょうがない、と将臣は望美をその場に残して少し先にあるコンビニまで走った。手早く買い物を済ませると再び望美のいる所まで走って戻って来て、袋の中から彼女の為に買ったアイスを手渡した。

「ほれ、これでも食って機嫌直せ」
「わあ…!将臣くんありがとう!」

不機嫌だった表情が一瞬のうちに笑顔に変わる。何て単純、と思いながらも何だかんだ言って望美に甘い自分自身に将臣は苦笑した。

「…惚れた弱みってやつだな」
「え、何か言ったー?」
「いんや、何でもねぇよ」

怒った表情も、笑った表情も、望美のどんな表情も愛しいと感じるのはきっと、望美の全てが好きだからなのだろう。だけど、それを口にするのは何だか癪なので望美にだけは絶対に言うまいと、将臣は決心したのだった。






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ツイッター診断のRTされたらリク書くってやつで、仲良くさせて頂いている綾香ちゃんからリクエストを戴いたので書かせてもらいました!前にツイッターで呟いた将望妄想が元ネタです(笑)
久々に将望が書けて凄く楽しかったです!綾香ちゃんリクエストありがとう!


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