「師匠、お呼びですかー?」
「うん。はい、これ」

孔明の呼び出しを受けて彼の私室へとやって来た花は、部屋に入るなり孔明から書簡を手渡された。

「これは?」
「玄徳様に渡してくれない?」
「玄徳さんに?」
「そう」
「でもこれは師匠が直接渡した方が良いんじゃないですか?」
「何を今更。それにボクじゃなく花から渡してもらった方が玄徳様は喜ぶよ」
「え?」

きょとんとした表情の花を横目で見やり、孔明は溜息を吐く。これだけ鈍感だと玄徳も苦労しているだろうと気の毒な気分になった。
それと同時に、目の前の弟子をからかってやりたいという気持ちが浮かんできて、孔明は再度口を開いた。

「そういやさ、君達最近どうなの?」
「はい?」
「だから、玄徳様とよろしくやってんの?ってこと」
「……えええええ!?」

案の定、顔を真っ赤にして激しく動揺した花に孔明は思わず吹き出してしまった。

「あはははは!花、傑作」
「ちょっと師匠!笑わないで下さいよ〜!」
「だって君の反応が可笑しくて。で、実際どうなの?幸せ?」

そう問い掛けると、途端に花はふにゃりと嬉しそうな笑みを浮かべ、はい、とだけ答えた。それだけで、彼女の気持ちは十分に伝わってくる。

「…そう、良かった。じゃあそれよろしくね」
「あ、はい!それじゃあ、失礼します」

礼を一つして、花は孔明の部屋を出た。すると、玄徳がちょうど目の前に立っていた。

「あ、玄徳さん。ちょうど良い所に」
「…花、ちょっと来い」
「え?」

書簡を渡そうとした瞬間、玄徳に腕を掴まれた。玄徳はそのまま花の腕を引き、自室の方向へと歩き出した。いきなりのことで何が何だか分からない花だったが、見上げた玄徳の表情があまりにも真剣味を帯びていたので、何も問うことは出来なかった。

部屋に入ると、花はそのまま壁際に追いやられた。目の前には玄徳がいて、逃げることが出来ない。どうしてこのような事態になったのか全くもって分からない花は恐る恐る口を開いた。

「あ、の…これは一体どういうこと、でしょうか…?」
「…さっき孔明と何を話していた」
「え?」
「楽しそうに、話をしていたじゃないか」

そこで、花は先程孔明と話しているところを玄徳が目撃したのではないかということに気が付いた。だが、それは自分達のことについてであって…やましいことなど何もない。
孔明に聞かれたことを話すのは少し恥ずかしかったが、このまま玄徳に誤解されるのは絶対に嫌だと思い、花は覚悟を決めて話し出した。

「師匠が…私達の仲はどうだって聞いてきたんです…よろしくやっているのか、って」
「…は?」
「だから…本当に何もなくて…」

花がそう言うと、玄徳は壁についていた手を離し――そのまま花を抱きしめた。

「…済まない」
「玄徳さん?」
「俺はどうもお前のこととなると周りが見えなくなる。不安になる。本当に情けないな」

申し訳なさそうに呟いた玄徳の背に腕を回して、花も玄徳を抱きしめ返した。

「…私は嬉しかったです」
「花?」
「いつも私ばかり玄徳さんを好きだなって思うから。だからやきもち妬いてくれたことが、凄く嬉しくて」
「何言ってる。俺はお前のことが何よりも大事なんだ。他の男と一緒にいたら妬かない訳がないだろう」

そのまま、奪うように玄徳は花に口付けた。玄徳に口付けをされる度に愛されているのだと、体で感じることが出来るのだ。これ程までに嬉しいことはない。

そのまま――玄徳から与えられる幸福な熱に、花はその身を任せた。


それは幸福で、贅沢な

(あなたの愛を実感する、時間)


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勢いに任せて書いてしまいました…三国恋戦記文を^q^一周目やってもう既に最萌えの予感しかしない玄花です。玄徳ルートクリアしたそのテンションで書いたのでちょっと色々間違っているかもしれないです。申し訳ありません><
優しくて頼りがいあって、でも情熱的で花ちゃんのことになると周りが見えない玄徳様が大好きです!←