今日はクリスマスイブ。星奏学院ではクリスマスパーティーが開かれ、校舎はいつにも増して賑やかだ。

一方、パーティーの喧騒から逃れたかのように静まり返っている練習室から聞こえてくるのは――ヴァイオリンとピアノのメロディー。練習室の一室に、それぞれ楽器を奏でる香穂子と土浦がいた。


「梁太郎、次何弾こっか?」
「俺は何でも良いぜ。お前の好きな曲にしろよ。でさ」
「ん?」

何か話を切り出そうとしている土浦に、香穂子は不思議そうな表情をした。土浦は暫しの間言うことを躊躇うような、そんな素振りを見せたが、意を決したかように口を開いた。

「…クリスマスパーティー、行きたいなら我慢しなくて良いんだぞ」
「え?」
「だーかーら!俺が踊るの苦手なことなら気にするな!お前が行きたいなら行けば良いってことだ」
「…何だ、そんなことか」
「そんなことっておま…」
「だって、梁太郎と二人で合わせてた方が楽しいもの」

あまりにもあっさりと香穂子がそう言ったので、土浦は呆気に取られてしまい、言葉が出なかった。

「それに、来年になったらこうして二人で合わせることも出来なくなるし…それなら一秒でも長く一緒に弾いてたいよ」
「香穂…そうだな、俺もお前と合わせてた方が楽しい」

来年の春、星奏学院を卒業したら香穂子はそのまま大学へ進学することが、一方の土浦は本格的に指揮者の勉強を始める為に海外留学することが決まっている。

遠距離恋愛になってしまうから、一緒にいられる時は出来る限り一緒にいようというのが二人で決めた約束だった。

「そうだ、香穂。手出せ」
「手?」

土浦に言われるままに香穂子は左手を出した。すると、土浦はポケットから箱を取り出した。そしてそれを開けた。

「これ、クリスマスプレゼント。お前に似合うと思って」
「わあ…!綺麗」

箱の中に収められていたのは、ヴァイオリンモチーフの金のブレスレットだった。土浦はブレスレットを取ると、それを香穂子の手首に着けた。

「うん、やっぱり似合ってるな」
「梁太郎ありがとう!凄く嬉しい…」
「お前に喜んでもらえて良かったぜ」

とても嬉しそうに微笑んで、何度も手首に飾られたブレスレットを眺める香穂子を見て、土浦の表情も綻んだ。

「ねえ、梁太郎!もっと弾こう!」
「ああ、そうだな。でもブレスレットは外した方が良いな。邪魔になるだろ?」
「ううん、外さないよ。だって、これ着けたまま梁太郎と弾きたいんだもの!」
「…ったく、お前はしょうがない奴だな」


そして二人はまたそれぞれの楽器を奏で始める。

――それはとても、幸福な音色で。


幸福な音色



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ブログうp話と同じですみません^q^クリスマスイブは土日文にしました!3年生のクリスマスパーティー設定で色々捏造しています。
土日は好きなCPなので、この二人でクリスマス話を書けて個人的に満足しています(笑)