「玄徳さん?」

玄徳の部屋で話している最中に突然ふ、と笑いを漏らした玄徳を不思議に思った花は尋ねるように彼の名前を呼んだ。

「ああ、済まない。ちょっと思い出してしまってな」
「思い出す?」

玄徳が返した言葉の意図を図りかね、花は再度玄徳に問い掛けた。すると、玄徳は優しさを込めた瞳で花を見つめながら口を開いた。

「ああ、お前と初めて出会った時のことをな。流石にあれは驚いたな、突然森の中から不思議な格好をしたお前が飛び出してきたからな」
「あ、あれは私も驚きましたよ!気付いたら森の中だったんですから」

当時を思い出したのか、困った表情になった花の頭を玄徳は撫でた。その手の温かさに花は安らぎを覚え、ゆっくりと目を閉じた。

「………かもしれないな」
「え?」

花の頭を撫でながらぽつりと何かを呟いた玄徳に、花は閉じていた目をぱちりと開いて問い返した。すると、玄徳は一瞬気恥ずかしそうな表情を浮かべたが、すぐにいつもの穏やかなそれに戻った。

「…もしかしたらあの瞬間から、俺はお前に惹かれていたのかもしれないと思ってな」
「げんとく、さん」

熱のこもった瞳で見つめられ、花はそれ以上言葉を紡ぐことが出来なかった。頬に手を添えられ、玄徳が近付いてくるのを感じながら目を閉じたその時――

「はなー!どこにいるのー?」

部屋の外から芙蓉姫の呼ぶ声が聞こえて来て、二人は咄嗟に身体を離した。折角の良い雰囲気に邪魔が入ってしまったことに苦笑しつつも、玄徳の態度は優しいままであった。

「芙蓉が呼んでるぞ。行ってやれ」
「あ、その、すみません…っ」
「あ、ちょっと待ってくれ」

部屋を出ていこうとする花を引き留め、玄徳は彼女の耳元で何かを囁いた。その瞬間、花の顔はみるみるうちに紅く染まり、そのまま逃げるように芙蓉姫のもとへと行ってしまった。

その様子があまりにも可笑しく、そして可愛らしかったので玄徳は珍しく声を上げて笑った。

一方、花は玄徳に囁かれた言葉が依然頭から離れず、更に頬が熱くなるのを感じていた。

『――続きは、また後でな』

(どうしよう、これじゃ芙蓉姫にからかわれちゃうよ〜)

そう思いながらも、花の頭の中に浮かぶのは彼女を待っていてくれる玄徳の姿なのだった。






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恋戦記移植発売おめでとうということで久し振りに書いてみたのですが…何だか微妙な感じになってしまいました…色々と忘れてます;
でも文章書いたらゲームの方やりたくなってきました。やっぱり玄花が一番好きですね。玄徳さんの我慢出来ない感じが好きです(笑)
とにかくPS2版発売おめでとうございます!沢山の人がハマってくれると嬉しいですね。