『お前を……愛してる』

俺の言葉に涙を流しながら微笑うお前。大丈夫、これは終わりじゃない。始まりだ。
絶対に、お前を探しに行くから――




「――っ!?こ、こは…」

二、三度辺りを見回す。きちんと並べられた本棚に、俺はここが図書館であると気付いた。そういえば、ここで本を探していた。その筈だが――何故か夢を見ていた気がした。長い、それは果てのないような夢を。そしてもう一つ、俺の脳裏に浮かんだのは――俺の手を取り微笑む、少女の姿だった。


それからだろうか、自分には別にしなくちゃならないことがあるような気がするようになったのは。志望校に進学してからは、余計にそう感じるようになった。
高校生活にも大分慣れてきた頃、俺は久し振りに好きだった三国志を読もうと思い、本棚から本を取り出し、ページをめくった。

――その瞬間、俺の中で何かが溢れた。

「こ、れは」

図書館で不思議な本を手にし、三国志の世界に飛ばされたこと。雲長殿を喪って、本も失った俺が――代わりに『関雲長』として、あの世界に組み込まれたこと。そのせいで何度も何度も生を繰り返していること。

「……花」

終わらない螺旋から俺を救い出してくれたたったひとりの――愛する少女のこと。全て俺は思い出した。

「あいに、いかなければ」

約束をした。どんな場所にいても、どれだけ時間が掛かっても見付けると、俺は花と約束したんだ。会いたい。花に、逢いたい――

幸運なことに、花の通っている高校は俺の通う高校からそう遠くはなかった。俺はすぐに両親に転校したいと告げた。
勿論父は猛反対した。また恥をかかせる気かと罵倒されたが、俺は引く気はなかった。花に代えられるものなんて、どこにもないんだ。

そんな俺の姿を見て、母が父を説得してくれた。この子がこうしたいと強く言ったのは初めてだ。だから、叶えてあげましょうと母は言った。母の言葉に父も折れ、そうして俺は花の通う高校へと転校出来ることになった。


そして、今日が転校の日だ。担任に案内され、俺は教室へと入った。簡単に自己紹介を済ませ、俺の席の方へ視線を移すと――俺の席の前には何だか見覚えがある少女が座っていた。

少しぼやけるその姿を鮮明に捉えようと、俺は目を細めて彼女を見た。

「……」

記憶と寸分違わぬその姿――花が、そこにいた。

「ああ、やっぱり――」


また、出逢う為に

約束を果たす時が来た――やっと、お前に出逢えたんだ。




****
三国恋戦記から雲花です。ED前を自分なりに書いてみました。
雲長ルートはOPから、ん?もしかして…と思う部分があったのですが、まさかその予感が当たるとはって感じでした(笑)でも物凄く好きなストーリーで、ラストシーンを迎えた時には本当に嬉しかったです。二人には幸せになってもらいたいですね。
次のページに少しだけおまけを載せておきます。



next→