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月子と、喧嘩した。

きっかけはほんの些細なことだったと思う。僕が言ったことに君が不機嫌になったというか、いきなり返事がそっけなくなった。何だか僕も面白くなくなって、君の返事に興味なさそうな態度を取った。そしたら余計に君は不機嫌になって、僕も一度そんな態度を示した以上後には引けなくなって…今の状態に至るって訳。

向かい合って座っているのにお互い視線を逸らし、言葉も交わさないままどれ位の時間が過ぎただろう――久し振りのデートだっていうのに、僕達は何をしているんだか。


こういう類の喧嘩、経験がない訳じゃない。というより、必ずは通る道だと思ってる。その度に僕は上手くやってきたし、すぐに和解も出来た筈だ。それなのに――君を相手にすると、どうしてそれが出来なくなっちゃうんだろう。

君の行動ひとつひとつに振り回される僕がいる。君は僕の想像を簡単に越えてしまうから。思いもよらぬ行動を、考えを、いとも容易くしてしまうから。

そしてそれと同時に――時々君の本心が見えなくなって酷く不安になるんだ。


だけど、それが当たり前なのかもって最近気が付いたんだ。僕達はひとつにはなれない――完全に相手を知ることなんて出来やしないって。今までの僕は知った振りをしていたのかもしれない、人の心を。だけどそうじゃないってことに気付かせてくれたのは


――月子、君なんだよ。


「月子」
「…何ですか」

こんな時にでも名前を呼ぶと君は応えてくれる――何て可愛いんだろう。まだ拗ねた表情をしている君にひとつキスを落とす。君がそんな表情をしてる理由を、聞かなくちゃ。僕の想いを、言葉で君に伝えなきゃ。こういうのって僕の柄じゃないけど…君とならそれも良いかなって思うから。

「僕ね、君に言いたいことがあるんだ」


まだまだお子様で、しかも頑固で時々人の話を聞かない――それでも誰よりも愛しい僕だけのお姫様。


僕はね、君と一緒にいたいんだよ。


DISTANCE

(君も、同じ気持ちだよね?)



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ブログ再録。初めて書いた郁月です。月子相手には手探り状態の郁が好きだったり。





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