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「やべぇ遅刻だ…!」

朝っぱらから俺は廊下を全力疾走していた。いつもの遅刻ならこんなには急がない。だが今日は生徒会主催のクリスマスパーティー。こんな日に遅刻なんて、出来るかよ!

昨夜は絶対に寝坊しないと意気込んで寝たのに、結局はこんな有様になってしまったのが情けない。どうやら錫也が起こしに来たみたいだが、何時まで経っても起きない俺に起こすのを諦めてしまったんだろう。自分の情けなさに走りながら溜息が出た。

目の前に曲がり角が見えてきた。よっしゃ、あそこを曲がれば教室はすぐそこだ。ギリギリ遅刻せずに済みそうだと、俺はほっとした。
それで油断してしまったんだろう…曲がり角から飛び出してきた人影への反応に気付くのが遅れて、思い切りぶつかってしまった。

「うおっ!?」
「きゃっ」
「いてて…」
「あ、大丈夫ですか?」

聞こえてきた声に俺ははっとした。何故なら――その声は良く知った人のものだったからだ。

「月子!?」
「あ、哉太だったの」
「哉太だったの、じゃねー…っ!?」
「哉太?」

月子の格好を目にし、俺は二の句が継げなくなった。
目の前にいる月子はサンタの格好をしている。ただのサンタならまだ良いが、丈は物凄く短いし、心なしか胸元が開いていて…俺は目のやり場に困り目を伏せた。頬がどんどん熱くなっていくのを感じる。

「そ、の格好、どうしたんだよ」

何とか絞り出した言葉が震えていて、情けないと思う。こういう時羊だったら一番に綺麗だとか言うんだろうし、錫也も上手くやれるだろう。俺だけが、こういう時に上手く出来ない。

「これ?白銀先輩が今日はこれを着たら良いんじゃないかってくれたの」
「…新聞部のか」

確かにあの先輩ならやりかねないと思い、溜息が零れた。全く人の彼女に何てもの贈り付けるんだ。
何か言おうと思い目の前の月子に視線を移すと――みるみるうちに月子の表情が暗くなっていくのが分かった。もしかして…俺の溜息を別の意味に取ったのか?

「あ、えと、似合わないよね」

予想通り過ぎて、ついつい苦笑いしてしまう。月子は更にそれを悪い意味に取ったんだろう、俯いてしまった。
あーもう!そうじゃない!弁解しようと思ったけれど、きっと余計なことを言ってしまうだろうから、俺は何も言わず月子の身体を強く抱きしめた。

「か、なた」
「…似合ってるよ。似合ってるから誰にも見せたくない」
「えっ!?」
「んなこと言わせんな、バカ」

遅刻確定。でももうそんなことどうでも良かった。
こんなにも可愛いサンタクロースを逃がしたくなくて、俺は月子を抱きしめる腕に力を込めた。


俺だけのサンタクロース


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メリークリスマス!ということで今年は哉月を書いてみました。いつもは素直になれない哉太が素直になるような話が書きたかったので、書けて良かったかなと思います。





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