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「月子、帰ろう」
「…そう、だね」

あ、まただ。月子が困ったように笑う。さっきまでは学科の奴らとあんなに楽しそうに笑っていたのに。最近俺といると月子はいつもこんな表情をするんだ。何で、どうして――そんな気持ちばかりが心の中に積もって、身体まで重くなる。

今日は久し振りに俺も月子も何もなくて、講義が終わる時間も同じだったから一緒に帰ろうと約束していた。だから俺は講義が終わると同時に、月子が取っている講義が行われる教室まで急いで向かった。今日こそはちゃんと話をしよう、そう思っていた筈だったのに、どうしてだろう?

俺達はろくに言葉も交わさず、ただ並んで歩いているだけだった。それなりに近い距離にあるマンションまでの帰り道が酷く遠く感じる。月子に話したくても、話せない。何を話せば良いのか分からない――前は話が途切れることがないっていう位に話せていたのに、どうやって話していたのか全く思い出せない。

不意に月子が足を止めた。それに気付き、俺もその場に立ち止まる。どうしたんだ、と俺が聞く前に、ぼんやりと空を眺めながら月子はぽつりと呟いた。

「…ここはあまり星が見えないね」

その言葉に――俺は何も返すことが出来なかった。

『それじゃあ今度どこかに星を見に行こうか』

でも、何とだって答えられた筈じゃないか。だけど、月子が俺から離れていくんじゃないかって、一瞬でも思ってしまったら――俺は何も出来なくなってしまったんだ。




(あいつの瞳があんなにも曇っていたから)




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久々の更新なのにこんな病んでる錫也さんでほんと申し訳…;
これを書く為に久し振りに後春の回想見たのですが予想外に滾りました。月子が好き過ぎて不安で仕方ない錫也がどうも好きみたいです(笑)
タイトルは「確かに恋だった」様からお借りしました。







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