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デスクに向かってパソコンと睨めっこしながら、オレは数日中に片付けなくてはならない仕事に取りかかっている。
夏休みに突入したために学園内にいる人は少なく、今現在職員室にはオレ一人しかいない。

今のうちにさっさと仕事を片付けてしまおうと思い、次やろうと思っている仕事のファイルを開こうとした瞬間、オレの目の前は何かに遮られて真っ暗になった。

「うわっ!?」

どうやら何者かに目隠しをされたようだ。どうせ帰省せずに学園に残っている生徒の一人だろう。この際ガツンと一言言ってやろうと思ったが、それは頭上から聞こえた声によってその思いは一瞬のうちに消え去った。

「陽日先生」
「夜久…!?」

聞こえた声にびっくりして振り返ると、そこには確かに夜久がいた。一瞬夢だろうかと思ったけれど、どうやらそうじゃないらしい。夜久が、ここにいるんだ。

「びっくりしました?」
「びっくりも何も、お前どうしてここにいるんだ!?」
「さて、どうしてでしょう?」

にっこりと笑って夜久はオレに問う。少しの間真剣に考えてはみたものの、夜久が今ここにいる理由が全くもって思い付かなかった。

「…ごめん、お手上げだ」
「もう先生ったら…はい、お誕生日おめでとうございます」
「え…?」

すとん、と空っぽなオレの腕の中に丁寧にラッピングされた袋が落とされる。視線を夜久の方に移すと、あいつはちょっと悪戯っぽい笑みを浮かべていた。

「今日お誕生日の陽日先生へプレゼントをお届けに参りました」
「…え、マジか!?」
「はい」
「うわぁ…スッゲー嬉しい!!」

漸く色んなことへの実感が沸いて、そして夜久からプレゼントを貰えたことが本当に嬉しくて、オレは大声を上げて喜んだ。

「喜んでもらえて嬉しいです」
「こんなサプライズは初めてだぜ!ほんとありがとな!」
「………かった」
「え?」
「去年は直接渡せなかったから…本当に良かった」
「夜久…」

一瞬、夜久の表情が翳る。夜久の気持ちはオレにも良く分かった――オレ達は去年互いの誕生日を共に過ごすことが出来なかったから。約束をしていたとはいえ、きっと夜久は凄く寂しい思いをしたに違いない。

「…これからは毎年絶対二人の誕生日祝いしような」
「――っ、先生」
「嬉しいことも、悲しいことも何でも二人で分かち合っていこうぜ」
「はい…!」

涙ぐむ夜久をぎゅっと抱きしめる。小さなその身体から伝わってくるぬくもりはとても愛おしい。
こんなに沢山の幸せを貰った分――今度はオレが何倍にもして夜久に幸せを届けよう。


便



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直獅誕生日おめでとうということで書きました。月子が高校卒業してから初めての直獅の誕生日という設定です。いっぱい辛い思いをした分、この二人には目一杯幸せになってもらいたいなと思います。




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