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「……く、郁」
「ん……つき、こ…?」

空から僕を呼ぶ声がして、ゆっくりと瞼を開ける。徐々に開けて行く視界に一番に飛び込んできたのは、月子の顔だった。

「ぐっすり寝てたみたいだね。良い夢でも見たの?」
「どうして」
「凄く幸せそうな表情をしてたから」
「…そうだね、幸せな夢を、見てた」

あれが現実だったらどんなに幸せだろうと思った。だけど、もう姉さんはいなくて――そこでやっと、僕は姉さんが夢の終わりで言った言葉の意味を理解した。

「…約束、守れたよ。姉さん」
「え?」
「何でもないよ」

不思議そうな表情の月子を引き寄せて、軽くキスをした。いくつになってもキスひとつで顔を真っ赤にする彼女のことを、とても愛しいと思う。

「い、いきなり何するの!?」
「別に良いじゃない。だって僕達恋人でしょ?」
「そ、れはそうだけど…」
「目覚めのキス、だよ」

月子からの反論が返ってくる前に、彼女の唇をキスで塞いだ。


――ねぇ、姉さん。姉さんがいなくてやっぱりまだ寂しいよ。だけど、もう僕は大丈夫。
月子がいるから、僕をあたたかく包んでくれる存在がいてくれるから――何よりも大切だと想う人に出会えたから。あの時の約束、僕は守ることが出来たよね?

生まれ変わりなんて信じてないけど、でも僕はまた姉さんの弟になりたい。その時は月子も一緒にいて――あの夢のように、幸せな時間を過ごしたい。

そう心の中で問い掛けると――私もだよ、という声が、確かに聞こえた。






****
郁の回想EDで来世でまた、みたいな描写があったのでそれで書きたいと思いつつ、転生ものはどうかなと思って夢という形で書いてみました。もしも来世があるのならば、郁が月子も有李もいる幸せな日常を送ることが出来たら良いなと思います。




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