今日もまた、平家との大きな戦が終わった。今回も源氏が勝ったから、陣の中は賑やかだった。今頃負けた平家は――将臣くんはどうしてるんだろう?

ふとそんな考えが頭を過った自分に激しく動揺した。将臣くんは敵、だから将臣くんがどうしているかなんて考えてはいけないことなのに。
頭を冷やすために、私はこっそりと陣を出て海岸の方へ向かった。


空からは次々と雪が降って来て、空気は冷たく、吐く息は白い。今はちょうど12月位なのだろうか?と考えてみて、不意にこの世界に来る前に交わした約束を思い出した。

将臣くんと譲くんがちょっと早いけどクリスマスプレゼントにと、私の欲しかったティーセットを買ってくれたこと。それをクリスマスパーティーで使おうねと約束したこと――今となっては遠い思い出だ。その約束も、もう叶うことはない。

私は源氏、将臣くんは平家を守り抜くことを決めた。これは譲れないことだってお互い分かっている。
だから――この先の未来に私達が一緒にいることなんて、ないんだ。


懐にしまっている懐中時計を取り出す。これは私の未練だ。
これまで何度も捨てようと思った。持っていては辛くなるだけだから。でも、そう思っても結局は捨てることなど出来なかった。

そこで私は気付いてしまった――将臣くんへの想いを。誰よりも大切で、誰よりも傍にいたかったのだ、と。将臣くんを――愛しているって。この懐中時計は、将臣くんへの想いの形なんだ。だから…捨てたくても捨てられない。

「…今更、だよね」

本当に今更だ。もう取り戻せない程遠くなってから気が付くなんて。どうしていつもこうなんだろう。

後悔しても、立ち止まることは許されない。私はみんなを守る為に先に進まなきゃいけない。それなのに――この懐中時計が、私の将臣くんへの想いが、その決意を揺るがすのだ。


何時の間にか、私は海岸まで降りて来ていた。海から吹いてくる風に、よりいっそう寒さを感じる。
海岸には、先客が来ていた。今一番逢いたくて、でも逢いたくないと願った人が、そこにはいた。

「まさおみ、くん」
「望美…!?」


ラストクリスマス

(私達が一緒に迎えることはもう二度と、ない)



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企画一本目はやっぱり将望で!そしてクリスマス話なのに幸せなだけではないのが私クオリティーです←
紅の月のドラマCDネタを取り入れつつ、本編沿いの話にしました。この辺りは切ないですがかなり好きな部分ですね。
次のクリスマス話は幸せな話にしようと思ってますのでご安心を!





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