一通り家事も部屋の掃除も終えて、ソファーに座って新聞を読んでいると、ピンポーン、と部屋のチャイムが鳴った。
訪ねてきたのが誰か、なんて一発で分かったけれど、モニターで一応姿を確認してからオレは急いで玄関へと向かった。

「景時さん、お誕生日おめでとうございます!」

鍵を開けて扉を開けると同時に、望美ちゃんの弾んだ声が聞こえてきた。


――事の発端は数日前に遡る。オレの仕事がたまたま早く片付いて、望美ちゃんのことを高校まで迎えに行った、その帰り道での話だ。

「今度の土曜日って景時さんの誕生日ですね」
「そうだけど…どうしたの突然?」

望美ちゃんがいきなり言ったものだから、不思議に思ってあんな返答をしてしまった。すると彼女は突然じゃないですよ、と少し不機嫌そうな表情に変わったから、オレは慌てて謝った。そんなオレの姿を見て、景時さんって結構自分のことには無頓着ですよね、と少し呆れたような表情になりながらも、さっきの失言を許してくれたのか望美ちゃんはそのまま話を続けた。

「で、今度の土曜日なんですけど景時さんの誕生日をお祝いしたいんです。二人でどこかに出掛けるのも良いなって思ったんですけど…」
「ん?」
「景時さんのお部屋でまったりお祝いするのも楽しいかなって思ったんです。景時さんはどっちが良いですか?」
「そうだね〜たまにはのんびりしよっか!」
「じゃあ決まりですね!私、ケーキとか色々準備しますね!」
「ありがと〜♪楽しみにしてるね」


――という訳で、今日はオレの部屋で望美ちゃんが誕生日を祝ってくれることになったんだ。

「ありがとう。君にそう言ってもらえて嬉しいよ」
「今日は沢山景時さんのことお祝いしますから、覚悟しておいて下さいね!」
「御意〜ってね。さ、上がってよ。あとその荷物オレが持つからさ」
「ありがとうございます。これはケーキとか料理とか…譲くんが色々作ってくれて。あ、私も手伝ったんですよ!」

望美ちゃんが持ってきた荷物を預かる。袋の中身がちらっと見えて、確かにこれは譲くんが作ってくれたものだということが分かった。譲くんにも後でお礼を言わなきゃな。

「そうなんだ?譲くんだけじゃなく君が手伝ったって言うなら、ますます楽しみになってきたよ〜」
「本当ですか!?じゃあ、早速用意しますね!」

オレがテーブルの上に料理の入った袋を置くと、早速嬉しそうな表情で望美ちゃんがテーブルに料理を広げ始めた。

「あ、準備終わるまで景時さんはソファーに座ってて下さい」
「うん、分かったよ」

望美ちゃんに言われるままにオレはソファーに腰掛けた。そして次々と料理を並べていく彼女の姿をぼんやりと眺めているうちに、何だか望美ちゃんが奥さんみたいだなと思えてきた。

毎日こうして彼女が料理を作ってくれたら、きっと凄く嬉しいだろう。毎日一緒にいられるならどんなに幸せだろう…

君と共に過ごす未来が――オレは欲しい。

「ねえ、望美ちゃん」
「はい?」
「今ね、君が料理並べてるの見て…まるでオレの奥さんになったみたいだって思っちゃった」
「奥さん…えええええ!?」

オレの言葉の意味を理解すると、望美ちゃんの顔が一気に真っ赤になった。それが可笑しくて、オレはつい吹き出してしまった。

「…くっ、ゴメン…っ、ははっ、望美ちゃん驚き過ぎだよ」
「だ、だって…」
「オレは本当にそう思ったんだよ。君がオレの奥さんになってくれたらどんなに幸せなのか、君と過ごす日々がどんなに楽しいものになるかってね」
「景時さん…」
「だから望美ちゃん、オレの奥さんになって…君の準備が出来るまでいつまでも待ってるから」
「っ……はい!私も景時さんのお嫁さんになりたいです!」

そう言ってオレの胸に飛び込んできた望美ちゃんを受け止めて、強く抱きしめる。きっと今のオレの顔はみっともない位に緩んでいるに違いない。

でも仕方ないよね。だって、この先に訪れる未来は幸せに満ち溢れているって分かるんだから。
――君が、オレと共にいてくれるって言ってくれたんだから。


約束の未来へ

(さあ行こう、君と二人で)



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景時誕生日おめでとう!ということで記念文になります。景時が楽しそうにしている姿を見るのが本当に好きで、幸せになってもらいたいなと思ってこれを書きました。少々無理矢理感は否めませんが…お祝いの気持ちは沢山込めました。本当におめでとう!





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