貴方の知らない一面を
「千鶴ちゃん」
境内の掃き掃除をしていた私は、不意に名前を呼ばれ、その声がする方に顔を向けた。
そこには良く知った人が笑みを浮かべて立っていた。
「ねぇ、お茶淹れてよ。おやつにしよう」
言われたままにお茶を用意し、沖田さんのもとに持っていくと、彼は自分の隣に座るよう、私に促した。
「お茶、淹れてきましたよ」
「ご苦労様。はい、これ」
沖田さんが差し出したものは、見たことのないお餅のようなお菓子。これは京のお菓子なのかな?
「これ、どうしたんですか?」
「勝手場から貰ってきた」
「それ、くすねてきたって言うんじゃ…」
「良いから。早く食べないとお茶も冷めちゃうよ」
沖田さんに急かされてそのお菓子を口に運ぶ。すると優しい甘さが口の中いっぱいに広がってきた。
「美味しい…!」
「でしょう?これを隠しておくだなんて土方さんも極悪人だよなぁ」
「…ふふっ」
「やっぱり笑ってた方が良いよ」
「え?」
顔を上げて沖田さんを見ると、普段は見せないような柔らかな表情を私に向けていた。
「君には難しい顔なんか似合わないよ。どうせそんなこと考えたって君じゃ分からないんだし」
「なっ…失礼です!」
「ははっ、やっぱり千鶴ちゃんは面白いな」
そう言う沖田さんの表情は、もう何時通りのをからかうようなものに変わっていた。
今でも…沖田さんをやっぱり怖いなと思うことはある。それでも一緒にいるうちに、知らなかった一面が見えてきた気がするの。例えば…こんな風に優しかったりするところだったり。
この先もまた、私が知らない沖田さんの一面を見ることが出来るのかな?見たいと思う私がいる。
なぜなら、あなたのことがもっと知りたい――今の私はそう思っているから。
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拍手お礼文でした。まだお互いの気持ちに気が付いてない頃の二人を書いてみました。