Happiness

「勅使河原君!」

背後から名前を呼ばれて振り返ると、こっちに向かって走って来る天橋の姿が目に留まった。何か包みみたいなものを腕の中に抱えている。

「そんなに急いでどうしたんだ?」
「勅使河原君に渡したいものがあって」
「…俺に?」
「はい、これ!」

そう言って天橋は持っていた包みを俺に手渡してくれたんだが、突然このようなプレゼントを用意したのか俺にはさっぱり分からなかった。いや、勿論天橋からのプレゼントは嬉しい。凄く嬉しい。だが、こういきなり渡されると心の準備というかそういうのがだな…

ぐるぐると頭の中で葛藤を続けている俺に、天橋は最初心配そうな表情を向けていたのだが、暫くして何かに気付いたように声を上げた。

「…もしかして勅使河原君、今日何の日か忘れてない?」
「は?」
「やっぱり…」

大きく溜息を吐いた天橋の姿に、俺は一抹の不安を覚えた。何か重大なことを忘れていたのだろうか?しかし、そんなことを素直に聞くことが出来る訳もなく、俺はつい素っ気ない態度を取ってしまう。

「…一体俺が何を忘れてるんだというんだ」
「勅使河原君って割と自分のことには無頓着だよね」
「なっ…!」
「今日、勅使河原君のお誕生日でしょう?」
「……あ、あああああああ!!!!」

今日が自分の誕生日だということを、今の今まで綺麗さっぱり忘れていた。いや、最近忙しかったから…と自分に言い訳してみても、虚しいだけだった。
そして、最近天橋が何だか落ち着きのない様子だった理由にも漸く思い当たった。俺の為に色々と考えてくれていたのだな…とても嬉しい半面、その気持ちに気が付くことが出来なかった自分に対し、情けない気持ちにもなった。

「ふふっ」
「な、何だ」
「何か、勅使河原君らしいなって思って」
「誕生日を忘れていたことか?」
「そう。きっと生徒会や部活に一生懸命でつい頭から抜けちゃってたんでしょう?」
「うっ…」

図星を突かれ、それ以上何も言えなかった。そんな俺に、何故か天橋は覚悟を決めたような、少し緊張した表情を見せた。

「……勅使河原君のそういうとこが…好き、だよ」
「―――っ!?」

好き、と言われ急激に頬に熱が集まる。きっと今の俺の顔は真っ赤になっているに違いない。そんな表情を見られたくはなくて、俺は無意識のうちに天橋のことを抱きしめていた。

「て、しがわらくん!?」
「………俺もお前が好きだ」

あまりにも情けないけれど、それが俺の精一杯だった。だけど、天橋はそんな俺を笑ったりはせず、寧ろ嬉しそうに言葉を返してくれた。

「勅使河原君、お誕生日おめでとう。生まれて来てくれてありがとう」


――ほんの少し前まで誕生日などすっかり忘れていた筈なのに、天橋のおかげでこんなにも嬉しい気持ちになるなんて我ながら現金な奴だと心の中で苦笑する。だが、今はこの幸せにずっと溺れていたいと、俺は天橋を抱きしめる腕に力を込めた。


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ガーネットクレイドル最愛キャラ勅使河原透矢の誕生日ということでお祝いSS書きました。口調とかこれで合ってるのか…?という感じは否めませんが愛だけは込めたつもりです!透矢本当に誕生日おめでとう!





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