無自覚、時々大胆

「先輩、こっちです」
「うん、今行くね」

一足先に席に着いた僕が声を掛けると、先輩がお盆を持って少し急ぎ足でこっちへ向かってくる。
今日の部活は午前だけだったから、練習が終わった僕と先輩は一緒にお昼を食べることにした。

先輩が席に着いたので、僕達は食事を始めた。今日の練習のことなどを話しながら箸を進めていると、何だか先輩からの視線を感じた。

「先輩?」
「梓君、ほっぺたにご飯粒付いてるよ」
「え?」

ご飯粒が付いていると僕に言ったかと思うと、先輩は僕の頬に触れてそのご飯粒を取った。そしてそれを――自分の口へと運んだ。

「うん、取れた」
「…………」

そんな大胆なことを先輩があまりにも自然にしてしまったから、僕の方が照れてしまって柄にもなく頬が熱くなった。

「どうしたの?梓君…あっ」

そんな僕の様子から先輩はどうやらさっき先輩が僕にしたことがどれだけ大胆だったのかを気付いたらしい。みるみるうちに顔が真っ赤に染まっていく。それが可笑しくて、だけどとても可愛くてつい僕は笑ってしまった。笑わないで、と抗議する姿もまた、可愛いなって思ってしまった。


先輩はこんな風に時々無自覚で大胆なことをしてしまうから、ちょっと戸惑うこともある。だけど、そんな所を含めて僕は先輩が好きなんだから――これはもう仕方ないかなって思うんだ。先輩にならちょっとぐらい振り回されるのも、悪くはないかな。



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拍手お礼として置いていた梓月です。このCPは梓がいつも優位ですが、時々は月子が梓を振りまわしていたら良いななんて思って書きました。





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