言葉にすることはないまま、私たちは、毎日を繰り返した。
昼は毎日のように昼食を食べに来て、そのまま子供と一緒に過ごしたり、私たちと過ごして。
夜は本当に時々、私と過ごし、抱き合うことをしたり、しないことも。
偶にそれを子供の泣き声に邪魔され、ふたりして笑い合う。

幸せな、時間だった。

まるで、彼が居た時のように。
彼が居た時より、充実していたように。



「明日、この街を出る」


そして、彼と同じように、彼は、辛そうな顔を浮かべた。
その頃にはすっかり子供は父親のように彼を慕い、彼の感情に、揺れるように瞳を歪める。


「ねぇマルコさん、お散歩に、行きましょうか」


泣いてぐずり始める子供を抱き上げあやし、私は笑みを浮かべる。
これが、最後かもしれない。
海を、三人で見るのも。
次見る時は、もしかしたら、ひとりかもしれない。


「お願いが、あるんです」



幸福な死を宣言



どうか、この子だけでも、この海に。
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