「ぺ、ぺんぎ、ん、さ、」
「どうした?」

どうした、じゃ、ないです。

「も、やです、はずかしいです、手、離して、」
「無理だな」

いつもと違う、意地悪なペンギンさん。
いつもは、こんなことしないのに。

ほんのりと色付いた頬、ちょっと、潤んだ瞳。

(……たぶん、すごく、酔ってる…)

大方、船長にしこたま飲まされたんだろう。
ペンギンさんはお酒に強いけど、ザルって程じゃない。

だからちょっと覚束ない足取りで私の部屋に来たときは心配したけど。

「ぺんぎんさん…っ」

まさか、そのまま抱き着かれて、ひょいっと抱き上げられて、横抱きのまま、膝の上に座らされる、なんて。
恥ずかしさがじわじわと侵食して、でも逃げ出そうにもペンギンさんの力が強くて動けなかった。

どうしたらこの腕を離してくれるか考えたけど、答えは一向に出ず、ただ恥ずかしい状態のままが続いている。

「は、離して、くれないと、怒りますよ!」
「嫌だ」
「ううう…」

そうこうしてるうちに、首筋、というか、胸に近いところにペンギンさんの息がかかって、びくりと肩が跳ねた。
ちょ、ちょっと、ほんとに…!

「ぺんぎんさ…ッ」
「……」
「は、え……?」

本当に怒りますよ、とじっと睨み付けようと思ったら、すう、と何とも穏やかな息が聞こえた。

「あ、れ……ねてる……?」

まさか。
まさかこの状態のまま。
寝て、しまう、とか、そんなのって。

「私、抱き枕じゃないのに……」

眠ってる癖に、腕の拘束は外れないまま。
どうすればいいの、本当に、もう。

諦めて、そのままペンギンさんの方に身体を寄せる。
寝てるなら、どうしようもないから。

うん、悪いのはペンギンさんだし、何か、いつもよりペンギンさんは体温高いし、私も眠くなってきたし、そのまま寝てしまおう。

起きたペンギンさんが、勝手に驚けばいいんだ。



怒ってるの



(……………は?)
(……すー…)
(………何でこんなことに…)
(………んん…)
(…………生殺しだ……)

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