あなたはいつから、私を、見てくれなくなったんでしょうか。
いつから、この気持ちは、また一方通行に戻ったんでしょうか。

あなたに抱かれてから、三ヶ月が経ちました。
あなたとキスをしてから、一ヶ月が経ちました。
あなたと会わなくなって、今日で十日目です。

同じ船内に居るのに、会えないのはどうして。
それなのに、船内に居る女性たちから、彼の話を聞くのは何故。

私がいけなかったんでしょうか。
もう、私のこと、好きじゃなくなりましたか?

でも、決めていたんです、マルコさん。
私。


「この関係を、終わりにしませんか」
「…ヘレン?」


船内を走り回って、彼を見つけて、腕を掴んで、驚いた彼の顔を、久々に見た。
そう、だって、十日間も会っていなかったんだから。この十日、私はこの言葉を言うだけに使った。
周りにひとが居たって構わない。
今言わないと、全てが流れてしまいそう。

「終わりに、しましょう」

船を降りるつもりはない。
この、付き合っているという、その不安定な関係を解消して、またただの仲間に戻るだけだ。

私が彼を好きでも、それは関係ない。
彼が、もう私を、好きでないのなら。

「こんなところで、急に何言ってんだよい」
「皆さんに言う手間が省けただけです」
「……本気か?」
「冗談で、私、こんなこと、言いたくありません」

私、知ってるんです。
あなたが、私以外のひとを抱いたって。
あなたが、私以外のひととキスしたって。
あなたが、この三ヶ月、一ヶ月、十日の間、私以外のひととは、一緒にいたってこと。

私だけだった。
私だけ、彼の視界にいなかった。

それがどんなに悲しかったか。
それがどんなに辛かったか。

「マルコさん、別れましょう」
「…ヘレン、」
「お願い、します、私もう、…」

あなたと、一緒に居ることが、幸せだった。
それだけで、私はずっと、幸せでいられた。

でももう無理なんです。
あなたが他の誰かを抱いたって聞くのは、キスしたって聞くのは、あなたの名前しか聞けない日々は。

私には、耐えられない。


「あなたが、嫌いなの」


そっと頬を伝って、涙が落ちていく。
嫌いなんて嘘、本当は、まだ、あなたが大好きで、愛してる。

だけど、これで終わりにしましょう。
私と、あなたの関係を。


泡と涙


(私の片想いは、片想いのまま)
(溶けて消えて)
(なくならない)

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