「サンジ、お茶貰える?」 「あー、悪い、今手離せねぇんだ、そこにあるから、」 「はいはい、自分でやりますよー」 キッチンの扉を開けて中に入り、いつでも私たちが飲めるように準備してあるポットの元に向かう。 サンジは何やら作っているらしい。 …そっか、そろそろおやつの時間か。 「今日なーに?」 「あと少しで出来るから待ってろ」 「ちぇ」 …これが、ナミとかロビンだったら、色々喜んでしてくれるんだろうなぁ、なんて。 女扱いされてない私じゃ、全然だ。こっちを見てもくれない。 こぽ、こぽ、と音を立てて手に持ったカップの中に紅茶が満たされていく。 良い香りだ。 白いカップが、段々と、薄茶色い、濃い飴色で埋まる。 埋まる、埋まる。 埋まって、そのまま、淵を通って、落ちて。 ………落ちて? 「っ、あ、つ…!」 そのままカップを落としそうになったけど、どうにか思いとどまった。 落としたら落としたで床に熱いお茶と割れるだろうカップの破片が飛び散るだろう。 熱さに耐えながらテーブルの上に置くことにした。 その間、多分一秒もなかった。頑張った私。 「ッ何してんだヘレン!」 「え、や、何かぼーっとしてた、」 「…っクソ、」 手がひりひりして、じんじんする。 いつの間にか作ってるものを放り投げたらしいサンジが、私の痛むその手首を強く引いて、水でがんがんそこを流される。 「…ここだけか?」 「うん、多分」 「……ったく、何やってんだよお前…」 「ほんとにね、自分でもあほさにびっくりした」 ジャーって水の流れる音と、ぽつぽつ、話す私とサンジ。 火傷の赤みは大分引いたと思うけど、…如何せん、掴まれたままで、ちょっと、居た堪れない。 「…これ位なら痕も残らねぇと思うが、ちゃんとチョッパーに見てもらえよ」 「わかってるー」 「あと」 「うん?」 水が止まって、真新しい綺麗なタオルで手を巻かれて、呆れた顔したサンジが、私の頭にぽすん、と手を置いた。 「茶も一人でいれられないヘレンのために、今度から俺がわざわざ淹れてやるよ」 そのままぐしゃぐしゃに髪を撫でられ、扉をいつもナミとかロビンのために開けるみたいにしてくれて、背中を軽く押される。 「……それくらい出来るし」 「嬉しくねぇのかよ」 「嬉しい」 「よろしい」 あ、その笑った顔、好きだ。 火傷は痛いけど、悪いことばっかりじゃ、なかったかも、しれない。 怪我の功名 |