「―‥それ、なんだけどね。
 リーシャが郵便館で女の子たちが噂話してたのを聞いたらしくて。
 それでちょっとね‥」

軽く溜め息をつき、言葉尻を濁す。

「噂話?」

「ええ。あの娘とお茶してたときに、その事が話題に上がったの。
 リーシャ、結構気にしてたみたいで」

ティー・カップを口許に、苦笑いしつつ話し始めてから、目の前で雰囲気も穏やかにゆったりとくつろぐジギーを見て ふと思う。


  ‥そういえば、ジギーは好きなのかな?
  胸の大きな女性、って‥。


「‥‥ねぇ ジギー」

「‥ん? なんだ?」


「ジギーは、胸の大きい女の子の方が好き?」


 ――ガチャガチャン‥!!


思い付いたそのままを聞いてみると、ジギーはちょうど置こうとしていたカップをソーサーの上に落とした。

「や、やだっっ
 ジギー、大丈夫!?!」

溢れたお茶がテーブルを伝い、ジギーの内腿を濡らす。
とっさに台拭きを取り、慌てて駆け寄った。

「やけど してない!?!」

ジギーの脚に布巾を押し当てて、濡れた部分を拭きながら素手で熱さと水けを確かめていく。

「‥! お、おい‥っ」

彼の驚く声が聞こえたが、構わずに続けた。

「‥よかった、表面だけであまり染みてないわ。
 生地の厚い服だったから、大事にならなくて済―‥」

大事にならなくて済んだのね と微笑み掛けるつもりで、ジギーの顔を見上げて言葉が止まった。
‥‥ジギー、顔 真っ赤‥‥。

「‥‥‥その、自分で拭く‥。」

真っ赤になったまま、顔を背けて躊躇いがちに呟く。

「え‥」

ジギーが脚に紅茶を溢した―‥
その事に必死だった私は、彼に言われた言葉を理解するまでの暫くの間、戸惑ってしまった。
そして その意味に気付いた頃には、遅かった。

「‥‥!?」

ジギーの内腿に置かれた両手と、彼に迫るような前屈みの姿勢が―‥。


  私ってば何てこと―――っ!!!


「ごっ ごめんなさいっっ!!」

大慌てで身を離したけれど、恥ずかしさと胸のどきどきは治まらなくて‥‥。


  もう、最っ低―――!!


ジギーに背を向け、懸命に平静を装いながらも自分のしでかした身の振りに心の中では秤の目方の振り切れんばかりにおろおろとしていると―‥

「‥‥‥リリィ」


「はっ、はいっ?!」

後ろから、私の名前を呼ぶ ジギーの低く甘い声が聞こえた―‥。


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