「もう、何で今日に限って遅くなっちゃうかな…」
珍しく配達が遅くなった私は、いつもより遅い時間のハチノス館内を早足で歩いていた。
「リリィ、まだハチノスにいるといいんだけど…」
呟きながら探すのは、私の親友の姿。私より遅く終わる事の方が多いとは聞いてるけど、実際どれぐらい遅くなってるのかは知らないんだよね。
「あ、リリィいた…」
ようやく見つけたリリィは、今まさにハチノスのロビーから外に出ようとしていた。
「リリィ!待ってー!」
「リーシャ、そんなに慌ててどうしたの?」
そんなリリィを引き止めるべく慌てて声をかければ、彼女は扉脇で私が来るのを待っててくれる。
「今日はリリィのお誕生日でしょ。だからこれ、プレゼント。お誕生日おめでとう、リリィ!」
「…ありがとう、リーシャ」
私のお祝いとプレゼントを受け取って、嬉しそうに微笑むリリィ。よかった、リリィの誕生日当日に手渡し出来て。
「リリィの好きそうな物を選んだから、きっと二番目に喜んでくれると思うんだ」
「二番目?」
意味が分からなかったんだろう。リリィが不思議そうに聞き返してくる。
「うん。だって、リリィが貰って一番嬉しいのはジギーからのプレゼントでしょ?だから、二番目は私なの。一番はジギーに譲るけど、二番は誰にも譲らないんだからね」
「もう、リーシャってば…」
私の二番目宣言を聞いて、くすくすと笑うリリィ。この立ち位置は、館長にだって渡さない。
「今夜辺り、案外ジギーと結ばれちゃったりして。ほら、誕生日って特別だし」
「なっ!?何言ってるのよ!?」
にっこり笑顔でからかえば、リリィの顔が途端に赤くなった。恥ずかしそうだけど、満更でもなさそうな感じだよね。
「どっちにしろ、結果はちゃんと教えてね!」
「だから、リーシャ…」
「そう言えば、今日はもう仕事終わったんだよね?だったら、一緒に帰ろうよ」
話を変えながら、私はハチノスの扉を開けて外に出る。
「もちろん……」
私に続いて外へ出たリリィが頷いて、その動きが止まった。彼女の視線の先には、遠くからこちらへ向かって走ってくる鉄の馬。
「お邪魔虫になりそうだから、今日は先帰るよ。また今度一緒に帰ろうね」
「リーシャ、ごめんね。ありがとう」
リリィに挨拶をして、私は一人歩き出す。親友のこれからの一年が幸せでありますように。願いはきっと叶うって信じてる。
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私の誕生日に、碧乃嬢が送ってきてくれた ヒロインず友情夢。
ジギーには負けてやる な演出が彼女の夢らしく、我が強くてなくて微笑ましい。
文末の2文に相方の想いが全て込められているって、読んだ瞬間に悟ったよ。
相方、ありがとう。