リリィの好きな人の体を求めたいと思うにはどうしたらいいのか?という、ある意味ぶっ飛んだ相談を受けてから数カ月。彼女は再び私の家を訪れていた。
「結局、私のあの話は役に立ったの?」
「しっかり役立ったわよ。ありがとう」
お互いにお茶を飲みながらの会話。内容は、相談を受けてからの事。今から数週間前、リリィは怒って私の所までやってきた。その時は彼女が怒ってたから、詳しい話を聞けなかったのだ。
「よかった。内面を赤裸々に話したのに、役立ってないと言われたら、悲しくなっちゃう所だったよ」
私がおどけて話してみれば、リリィはふふっと笑ってから口を開いた。
「リーシャのおかげで前向きな気持ちになれたのよ。それでね、実はちょっとだけジギーを感じたいと思えたの」
今のリリィは、この前と全然違った。弱気な表情の面影はどこにもなく、揺らぐ事のない自信に溢れた表情。私の大好きになった彼女だ。
「すごい進歩だね!おめでとう!」
「あ、ありがとう…」
「で、どこまでいったの?」
はにかむようにお礼を言うリリィに、私はにっこりと笑顔で訊いてみる。
「何にもなかったわよ」
「本当に?」
じーっと相手の目を逸らさずに見つめ続ける攻撃。相手がリリィだった場合には、かなり有効な手段だったりする。
「本当だってば!」
「本当?」
さらにじーっと見つめ続ける。ほら、そろそろ根負けした彼女が何か漏らすはず。
「もう、本当に何もなかったんだって!ただ一緒に寝ただけだから!」
リリィが思わず漏らした一言を聞いて、私はにやりと笑った。
「へえー、一緒に寝たんだー」
「添い寝というか、一晩中抱き枕にされただけよ」
リリィが渋々といった感じに話してくれる。でも、その顔は何だか嬉しそうだった。
「やっぱり、何かあったじゃない」
「そ、それよりリーシャはどうだったの?」
再びにやりと笑えば、今度はリリィが私に質問してくる。
「何が?」
「私が帰った後の事よ。ゴーシュさんに私の事を話しただけじゃなかったんじゃない?」
今度は、意味が分からなくて首を傾げた私にも、よく分かるように問われた。
「あー、うん、まあ…」
私はあの時の事を思い出して、言葉を濁しておく。まさか、あんな展開になるとは思ってなかったよ。
「実はリーシャ、あれからゴーシュさんに抱かれたんでしょ?」
「な、何で知ってるの!?」
不意にリリィから指摘された内容に、私は思わずイスから立ち上がって、彼女をまじまじと見つめる。私、あの時に抱かれたなんて言った覚えないよ?
「そりゃ、今のリーシャの反応と、あの時のゴーシュさんの様子を見てれば解るわよ。ゴーシュさん、リーシャが妬いて喜んでいたしね。なおかつ、私の事を話したとなれば、必然的にリーシャの内面を話さざるをえないから。あれだけ幸せいっぱいに話すリーシャを見ていたら、ゴーシュさんなら間違いなく抱くだろうなと思っただけ」
「あう。まさしくその通りだったよ…」
長々としたリリィなりの推察は見事に大当たりで、私は力なくイスに座り込んだ。
「で、やっぱり激しかったの?」
興味津々とばかりに訊いてくるリリィ。うわー、すごい楽しそう。もしかして、さっきの仕返し?
「激しいのはいつもの事だけど、いじわるさに拍車がかかったというか、何というか…」
もごもごと口ごもる。私が幸せを感じていると分かったからか、ゴーシュはさらにいじわるな事を言ったり、私にいろいろ言わせるようになった。恥ずかしくて黙ると、何もしてくれないし。
「普段は優しいのに、どうしてかな…?」
「それは、リーシャの反応が楽しいからでしょ」
ぽつりと疑問を漏らした私に、リリィが意外な答えを教えてくれた。
「え、そうなの?」
私の反応が楽しいって、どういう事?私の反応、普通と何か違うの?
「ほら、リーシャって素直に反応するから、見ていて楽しいのよ。なんて言えばいいのかしら。見ていて微笑ましいのよ」
「………」
それって、私が子供っぽいって事?そりゃ、ゴーシュやリリィにアリアさん、ついでにジギーも、みんな大人っぽいけどさ。あ、ジギーはもう大人だっけ。つまり、私だけが子供っぽいって事で…。
「そういう反応が、素直で楽しいって事よ」
ふふっと笑いながら言うリリィに、私はさらに黙り込むのだった。
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