「ゴーシュって、誰にでも優しいよね」

「そうですか?」

ソファに座った私がふと零した一言を聞いて、隣に座るゴーシュはきょとんと首を傾げた。

「うん。シルベットに優しいのはもちろん、幼なじみのアリアさんにも優しいでしょ。この前だって、町で困ってた人を助けてたし。まあ、私はゴーシュのその優しさに惹かれたんだけど」

にこっと笑ってから、一旦そこで言葉を切る。そして、ゴーシュの膝の上に乗って、彼の首に両手を回した。彼の額に私の額をぴたりとくっ付け、言葉を続けていく。

「でもね、私だけに見せてくれる一面とかあったら、嬉しいな」

言い終えてから、私はゴーシュへちゅっと触れるだけのキスをした。それから、少しだけ顔を離して彼をじっと見つめる。

「リーシャだけに見せる一面、ですか…」

「恋人なんだし、私だけが知ってるゴーシュの一面とかあったら、とっても幸せだろうなーって思って」

考える素振りを見せるゴーシュに、私はさっきの言葉の真意を話した。

「なるほど。リーシャは優しいだけでは満足できないと?」

「そういう意味じゃないよ。ただ、ゴーシュの別の一面が見たいだけだもん」

口を尖らした私の様子をじっと見ていたゴーシュは大きくため息を吐く。

「リーシャを大切に想うから、なるべく表に出さないようにしていたんですけど、杞憂だったみたいですね」

「ゴーシュ…?」

独り言めいた言葉を言うゴーシュをまじまじと見つめる中、彼はにっこりと笑った。

「実は僕、好きな子ほどいじめたくなるタイプでして」

「え?」

「というわけで、これからは遠慮しないでいく事にします」

予想外のゴーシュの発言に驚いてる私をよそに、彼はきっぱりと宣言する。私は何となくよくない予感を覚えて、慌ててストップをかけようと口を開いた。

「ちょ、ちょっと待って…」

「待ちません。リーシャが望んだんですからね。誰も知らない僕の一面を見たいんでしょう?」

にこにこと笑うゴーシュは、何故か有無を言わせない雰囲気を醸し出していた。あれ?なんか、さっきまでと雰囲気が違わない?ねえ、気のせいだよね?

「確かにそうだけど、でも…!」

「それとも、リーシャはこんな僕は嫌いですか?」

言い募る私に対して、ゴーシュは悲しげな顔をして問いかけてくる。

「そんな事ないよ!私はどんなゴーシュでも大好きだもん!」

その顔を見たら、考えなくても勝手に体が動いてゴーシュを抱きしめていた。そして、否定の言葉を必死に紡いでいく。

「私がゴーシュを嫌いになるなんて、そんなの絶対にありえない。あるわけがないんだから!」

「なら、何も問題ないですね」

「あう…」

くすりと笑ったゴーシュに耳元で囁かれて、私は白旗を挙げるしかなかった。



「ねえ、好きな子ほどいじめるって、どんな事するの?やっぱり、痛い事するの?」

「痛い事って…。僕にそんな趣味はありませんよ」

ふと気になって質問してみれば、ゴーシュはくすりと笑ってからやんわりと否定した。

「本当?痛い事しない?」

「ええ、リーシャに痛い思いをさせたり、傷つけるような事は絶対にしないと約束します」

不安でじっと見つめる私の頭を優しく撫でながら、しっかりと約束してくれるゴーシュ。ゆっくりと不安が溶かされていく。

「よかったー」

「強いて言うなら、いじわるするぐらいですね」

安心した私の耳に聞こえたゴーシュの言葉。意味がよく分からなくて首を傾げる。

「いじわる?」

「まあ、それはまた後でのお楽しみという事で」

楽しそうなゴーシュの様子に、私はさらに疑問符を浮かべるのだった。



ちなみに、私がゴーシュの言ういじわるの意味をきちんと理解したのは、その日の夜。彼に抱かれて、やっと分かったのだ。

「もう、あんな事までするなんて恥ずかしいじゃない!」

「それがいいんじゃないですか。恥ずかしがってるリーシャも可愛いですよ」

「あう…」

事が終わってからの私の文句も、ゴーシュにはあっさりと受け流されてしまった。というか、ゴーシュってば、なんだかすごく楽しそうなんだけど…。

「それに、いつもより感じてましたよね。実は、こうされる方が好きだったとか?」

「知らない!」

ゴーシュの問いかけは、私にとって答えられるものじゃなかった。恥ずかしさのあまり、私はくるっと彼に背を向ける。火照る顔にそっと手を当てると、ひんやりしていて気持ちよく感じた。

「僕はリーシャがいっぱい感じてくれたから、嬉しいですよ」

後ろからくすりとゴーシュの笑い声が聞こえてきて、そのまま抱きしめられる。

「もう…」

体に回された腕に幸せを感じる私は、やっぱりゴーシュが大好きで。ため息を一つ吐いてから、体の力を抜いた。

「いじわるも程々にしてね?」

「はいはい」

「絶対だよ?」

耳元で聞こえる楽しそうな声に、しっかりと念押しておく。本当に分かってる?という疑問が湧かなくもないけど、とりあえず信じてみようと思った。




口は災いの元?

―――――
ゴーシュが微えすになったというか、オープンにした時の話ですね。気が付いたら、何故かゴーシュが微えすになっていたので書きました。

今ではうちのサイトのゴーシュは、すっかり優しいけどいじわるな人になってます。まあ、これはこれでありですよね。

2011.01.17 up
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