「うーん、どうしよう…?」

お店のショーウインドーを眺めながら、私は大きくため息を吐いた。

突然だけど、来週は私の恋人ゴーシュ・スエードの誕生日だったりする。18歳を迎える彼の誕生日。恋人の私としては、今年も気合いを入れてプレゼントしたい所なんだけど…。

「何をプレゼントしたらいいのか、分からないよ…」

そう、何をプレゼントしたらいいのか、分からなくて悩んでいるのだ。それとなく欲しい物を訊いてみても、今は特にないですよという答えが返ってくるし。

とりあえず、先月ぐらいからゴーシュと会えそうにない日や会わない日に、いろんなお店を巡りながら何かいい物はないかと探しているんだけど、なかなかピンとくる物は見つからない。

「今日も収穫なしか…。もう帰ろう…」

お仕事が終わってから歩き回っていたら、すっかり遅くなってしまった。お腹はぺこぺこだし、足は棒になりそうなぐらい疲れている。

「付き合わせてごめんね、レイラ。お家へ帰って、ごはんにしようか」

今日も付き合ってくれたレイラの頭を撫でてから、我が家へと帰るために歩き出す。

「リーシャ?」

プレゼントに悩みながら歩いていたら、聞き慣れた声が耳に入ってきた。顔を上げると、そこには見慣れた恋人の姿。

「あ、ゴーシュ。おかえりなさい!こんなに遅くまでお疲れさま!今日はどこに配達行ってきたの?」

予想外にゴーシュと会ってしまった事に、内心で驚きつつも明るく振る舞う。会えた事は嬉しいけど、今まで何していたか訊かれると困るのよね…。

「リーシャ」

なんて考えていたら、強めの響きで名前を呼ばれた。こういう時は、ゴーシュが内心であまりよく思ってない時だ。その証拠にほら、眉が顰められてる。

「何?」

私はそんなゴーシュの様子に気づかない振りをした。

「こんな遅くまで、家にも帰らず何をしていたんです?」

真剣な眼差しでじっと見つめられる。今の言葉からして、私が家に帰ってないのはしっかりバレてるっぽい。でも、理由まで話すわけにはいかないから、何とか誤魔化さなきゃ。

「欲しい物があったから、ちょっと探してただけだよ。今から帰る所なの」

にっこりと笑って答えたら、すっとゴーシュの手が伸ばされ、私は抱き寄せられる。寒い中ずっと外にいたせいか、ゴーシュがとても暖かく感じられた。

「こんなに冷え切って…。送って行きますよ。リーシャだけだと心配です」

そう言って、彼は私を抱きしめるのをやめてから、手を握って歩き出す。

「いいって!わざわざ送ってもらわなくても、心配ないってば。このぐらいの時間なら、いつも私一人で帰ってるし、本当に大丈夫だよ?それに、レイラもいるしね」

焦った私が何とか一人で帰れる事をアピールすると、ゴーシュの足がぴたりと止まった。くるりとこちらへ振り向く。

「いつも?」

「…あ、しまった」

「リーシャの家で、詳しく聞かせてもらいましょうか?」

ゴーシュはそれだけ言って、何事もなかったかのようにまた歩き始める。私は自分のうっかり発言を後悔しながら、家に帰ってどう切り抜けようかと考えてばかりだった。



「さて、話していただきますよ」

私が用意したお茶を一口飲んでから、ゴーシュはまっすぐに私を見据える。

「………」

何も答えられない私は、俯いて彼の視線から逃げた。

「リーシャの言い方からして、夜遅くまで出歩いてたのは今日だけじゃない。違いますか?」

言われた言葉に、内心ぎくりとする。だって、あれだけのやりとりで、私の行動がしっかりバレてるから。一呼吸して、静かに口を開く。

「…その通りだよ。どうしても欲しい物があって、探しに行ってるの。まだ見つかってないけど」

「何をそんなに探しているんですか?」

ゴーシュの言葉を認めたら、ついにされてしまった質問。

「………」

どうする?素直にゴーシュの誕生日プレゼントを探してたと伝える?そうすると、驚かす事ができないし。関係ないなんて言ったら、間違いなく喧嘩になっちゃうし。どう答えよう?

「リーシャ?」

「内緒。言ったら、サプライズにならないでしょ?」

悩んだ結果、内緒にしておく事にした。でも、それだけじゃ納得できないだろうから、少しだけ内容を教える。

「サプライズ?」

「うん。もう少ししたら夜遅くまで出歩くのもやめるし、ちゃんと理由も話すから、今は何も聞かないでほしいの」

意味が分かってないのか、きょとんとしているゴーシュにお願いする。どうか、私の行動を許して。

「…仕方ないですね。これからもレイラと一緒に行動するんですよ」

「はーい」

ため息を吐いた後、ゴーシュは私のお願いを聞いてくれた。そして、イスから立ち上がる。

「じゃあ、今日はもう帰ります。時期が来たら、僕にも教えて下さいね」

「ありがとう、ゴーシュ」

私の意思を尊重してくれるゴーシュの優しさが嬉しくて、私はお礼を伝えた。

「どういたしまして」

優しく微笑むゴーシュを見て決意する。絶対に彼の喜ぶプレゼントを見つけてみせる!と。



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