「ん…」

寝返りを打とうとしたけど、何故か打てない。目を覚ましてみれば、私は誰かに抱きしめられていた。

「もう、しょうがないなー…」

誰かなんてのは言わずもがな、隣に眠るゴーシュで。安らかな彼の寝顔を見て、自然と私の顔も綻ぶ。

「いつ見ても綺麗よね…」

いつもはなかなかじっくり見つめられないゴーシュも、眠っている今なら思いっきり観察し放題だ。

「うわー、睫長い…」

じーっと見ていて気づいた。ゴーシュってば、女の子の私ですら羨ましくなるぐらい睫長いし。いいなー…。なんて思いつつ、しばらく彼の寝顔を堪能する。うん、満足したからそろそろ眠ろうかな。

「どうしよう?」

ところが、いざ眠ろうとして気づいた。一度目が覚めた事で、今度はなかなか眠れなくてなってしまったのだ。かと言って、朝まで起きている気にもなれず。

「眠れない…」

目の前には、気持ちよさそうな寝息を立てるゴーシュ。私はもぞもぞと体を動かして、寝返りを打とうとした。

「…リーシャ」

だけど、その動きが思わず止まる。ゴーシュが私の名前を呼んだから。

「ゴーシュ?起きたの?」

「………」

私が問いかけても、彼からの返事はなかった。変わらずに聞こえる穏やかな寝息。という事は、今のはもしかして寝言?徐々に嬉しさが広がっていく。

「ゴーシュ、大好き…」

寝言で私の名前を呼んでくれた事が嬉しくて、私は眠っているゴーシュの唇にそっと自分の唇を重ねた。ところが、しばらくして唇を離しかけたら、頭に手を添えられる。

「!?」

え?と思う間もなく、今度は深く唇が重なった。最初は驚いて離れようとしたけど、だんだんと力が抜けていく。そして、ゆっくりと彼の唇が離れていった。

「いつから起きてたの?」

「もう、しょうがないなーと言った辺りから」

いつの間にか起きていたゴーシュを見つめながら問いかけると、彼はにっこりと笑って答えた。

「って、ほとんど最初からじゃない。起きてるなら起きてるって言ってよ」

「せっかくですから、リーシャがどんな行動するか知りたくて、つい…」

私の文句も何の其の。ゴーシュはにこにこと笑ったままだ。むぅーと頬を膨らませる。

「びっくりしたんだからね。寝てると思ったのに」

「すみません。リーシャの行動が可愛くて」

宥めるように優しく頭を撫でられる。でも、この顔は絶対悪いと思ってないよね。

「寝言で名前呼んでもらえたって喜んだのに、ぬか喜びになっちゃったな…」

「まあまあ。これで機嫌直して下さい」

残念という思いを込めて呟いたら、ゴーシュは私の鎖骨の辺りをきつく吸った。

「あんっ…」

思わず甘い声が出る。何度聞いても聞き慣れない自分の声が恥ずかしくて、私はぷいっとそっぽを向いた。

「相変わらず、ですね」

そんな私の様子がおもしろいのか、ゴーシュはくすりと笑った。ちらりと視線を戻せば、にこにこと楽しそうな笑顔を浮かべている。

「もう、ゴーシュはすぐに痕付けるんだから…」

「嫌ですか?」

私が口を尖らせながら文句を零すと、きょとんと首を傾げたゴーシュに問われた。

「ううん、嫌じゃないよ。私はゴーシュのものだっていう印みたいで嬉しいし」

首を横に振ってから、正直に答える。ゴーシュって、何気に痕付けるの好きだよね。翌日になって思わぬ場所にあるのを見つけると、一人で照れちゃうのは絶対内緒にしとかなくちゃ。

「リーシャ」

なんて考えていたら、ゴーシュに名前を呼ばれたので、慌てて顔を上げる。すると、すぐに唇が深く重ねられた。やがて、私の頭がぼーっとしてきた頃になってから、ようやく唇が離される。

「今からでも、いいですか?」

ゴーシュに訊かれて、腰の辺りがぞくりとした。いつもの優しい彼のまなざしではなく、男を感じさせる情欲的なまなざし。私の大好きな目。さっきまでの私なら、きっと恥ずかしくて顔を逸らすけど、今は私も同じ気持ちで…。

「うん、いいよ…」

素直にこくんと頷いて、私はそのままゴーシュへと体を預けた。




真夜中の一時

―――――
当初の予定では、ゴーシュはずっと寝ているはずでしたが、書いてる内に起きました。

私の書くゴーシュは何故かいつもこんな感じになります。おかしいな、相方のゴーシュは執事でかっこいいというのに、この差は何でしょうね。

2010.10.30 up
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