今日一日お休みだった私は、配達帰りのゴーシュと一緒に夕ご飯を食べていた。

「ねえ、ゴーシュ。私、お酒飲みたいな」

私の言葉に、ゴーシュが食事をする手を止め、まっすぐに私を見据える。

「リーシャ、前にも言いましたよね?お酒はまだ早いと」

そう。以前にお酒を飲みたいと言ったら、リーシャにはまだ早すぎますと一刀両断されてしまったのだ。

「えー。私だって、お酒ぐらい飲みたいよ。それに、実はもうお酒を買ってあるの。だから、今夜は二人で一緒に飲もうよ。ね?」

その視線に負けないように、言葉を紡いでいく。ついでに、上目遣いでじーっと見つめるの忘れない。

「買ってあるなら、仕方ありませんね。今夜だけですよ」

はあ…とため息を吐いた後、ようやくゴーシュは了承してくれた。やったー!

「で、何を飲むんですか?」

彼からの質問に、私は戸棚からロゼワインを取り出してくる。

「これ。この前、配達先の町で泊まった時に勧められて飲んでみたけど、とっても美味しかったの!」

「………」

はいと見せたら、何故かゴーシュは黙ってしまった。あれ?何で黙っちゃうの?

「ゴーシュ?」

「飲んだのですね?」

不思議に思って彼の名前を呼んだ私は、自分のうっかり発言を後悔した。あう、自分から暴露しちゃったよ。

「ひ、一口だけだったよ。ほんの味見程度で飲んだだけ。おいしかったから、ゴーシュと一緒に飲みたいと思ったの。…ごめんなさい」

「全く、リーシャは…」

慌てて言い訳してから謝ると、ゴーシュに再びため息を吐かれてしまう。何となく気まずい雰囲気。

「それよりも、早くご飯食べちゃってお酒飲もうよ!」

「はいはい」

その微妙な雰囲気を何とかしたくて、私は急いで残りのご飯を食べ始めるのだった。



「やっぱり美味しい!」

私はロゼワインを一口飲んでから、グラスを持ち上げる。明かりに翳され、ピンク色の液体は何とも言えないきれいな色に染まった。

「美味しい…」

ゴーシュも飲んでみたらしい。私と同じ感想で嬉しくなる。

「でしょでしょ!買って正解だったよ」

そう言って、グラスに入った残りを一気に飲み干した。ボトルを持ち、またグラスにロゼワインを注いでいく。

「なんか、ジュース飲んでるみたいだね」

「そうですね」

ごくごくとまた一度に全部飲みきって、再びロゼワインをグラスに補充した。

「リーシャ」

再び飲もうとグラスを持ち上げた所で、ゴーシュに名前を呼ばれる。

「ん?どうしたの?」

「ペースが早いですよ」

言われた意味がよく分からなくて、きょとんと首を傾げた。

「そんなに早く飲んでいると、お酒に呑まれますよ」

「何それ?私がお酒を飲んでるんだよ。お酒に飲まれるわけないって。どう考えても無理でしょ?」

「そういう意味じゃないんですけどね」

困ったように笑うゴーシュを見て変なのと思った私は、持っていたグラスに口を付ける。飲み終えて一息吐いた所で、ふと違和感を覚えた。

「あれ?なんか、ふわふわするー」

ふわふわと宙に浮くような感覚がしてきたと思ったら、体の中から熱くなってくる。

「酔ってきたんじゃないですか?それぐらいにしておいた方が…」

「何よ。私が買ったお酒なんだから、どれだけ飲んでもいいでしょ?それに、お酒飲んでもいいのは今日だけなんだから、私の好きにさせてよ」

ゴーシュの窘めるような言葉にかちんときた。私が買ってきたんだから、私の好きに飲むの!そう思って、私はごくごくと飲んでいく。

「全く…。明日、二日酔いになっても知りませんよ」

「あはは、大丈夫だって。この私が二日酔いになるわけないでしょー」

何だか楽しくなってきた。その気分のまま、ロゼワインをぐいっと流し込む。うん、何回飲んでも美味しい。ちょっと頭がくらくらーとするけど大丈夫だよね。



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